baseline和ホラー映画日和 お

 オーディション(1999) ★★★★
 オールナイトロング (1992) [シリーズ] ★★☆☆☆
 オールナイトロング2 (1995) [シリーズ] ★★★★
 オールナイトロング3 最終章 (1996) [シリーズ] ★★★☆☆
 オールナイトロング 誰でもよかった (2009) [シリーズ] ☆☆☆☆
 オカルト(2008) ★★★★★
 弟切草(2001) ☆☆☆☆
 オトシモノ (2006) ★★☆☆☆
 おろち(2008) ★★★★
 怨廻(2005) ★★★☆☆


オーディション

(1999年公開 三池崇史監督) ★★★★
《2017-07-15》   

[グロ][狂気][暴力]

キリキリキリ……恐いでしょう?
キリキリキリ……痛いでしょう?

ビデオ制作会社を経営している青山は7年前に妻を亡くし、一人息子の重彦と寂しい日々を過ごしていた。そんなある日、青山の身の上を案じた友人の吉川は、映画制作と称したオーディションを開催し、その中から再婚相手を探すことを提案する。最初は乗り気ではなかった青山だが、オーディションに現れた女性、麻美に出会い、加速度的に魅了されていく。だが、少しずつ明らかになった麻美の素顔は……。
(Amazon)

 村上龍の小説を三池崇史が実写化。90年代のホラーの、ほの暗いような独特の雰囲気が強く出ている作品。なお日本での公開は2000年に入ってからだったようだが、ひとまず1999年ということで。
 (その行為に幾分かの罪悪感はあれど)「再婚相手を、男が映画のオーディションを私的利用して選ぶ」という、現在では何らかの団体にぶん殴られるような出だしだが、そこはホラー。当然その報いを受ける。
 本作のヒロインは明らかに様子がおかしく、そしてホラーであることからもわかるので明かしてしまうが、このヒロインは狂っている。「海外での公開時に途中退場者やショックで倒れた」という逸話のあるらしい本作の、どこがどう狂っているかは見てのお楽しみとして。
 時折差し込まれる不気味な描写など、不安感を抱かせる間の持たせ方は上手いものの、半分過ぎるあたりまでホラー的な展開がほぼないのはやや難ではある。ただこの退屈さが、必要な手続きであったのも理解できる。この手の話が好きな人には本当にたまらないストーリーなので、我慢して見てほしい。
 このヒロイン役をしている椎名英姫、個人的にはあまりタイプではなかったのだが、段々と癖になっていくという良く合った人選だったと思う。
 選ぶ側もまた、選ばれているのだ。
 完全に余談だが、チョイ役だったりするものの、國村隼・石橋蓮司・大杉漣・小日向文世・斉木しげる・光石研と、日本俳優界きってのの怪しい大人たちが大量に出ている。アウトレイジかな?




オカルト

(2008年公開 白石晃士監督) ★★★★★
《2017-08-19》   


2005年、ある観光地で起きた無差別殺人。犯行直後に犯人が海に飛び降り自殺。白石晃士は事件の被害者である青年・江野祥平に出会い、奇妙な証言を聞き出すが…。
(Amazon)

 ある観光地で起こった通り魔事件を追うドキュメンタリー……という設定のフェイクもの。
 ムー的なとでもいうか、起こった事件を探っていくと、胡散臭いオカルトな仄めかし、或いは得体のしれない上位存在の影が見え隠れする。見ていて怖いわけではないのだが、名状しがたい「不気味」な作品に仕上がっている。
 しかし本作はホラーという以上に、ブロマンス――男同士の友情もの――という側面が強い。特殊な状況下で起こった友情は、その終着点がなんであろうと、その過程はかなり良いものだった。
 惜しむらくは白石作品の普遍的な問題として、やはりホラー演出が安っぽいところ。そこから派生して、ラストシーンもやや脱力的な感じになってしまっているところ。そこさえ(いつもの白石作品だが)許容できるならば、きっと本作は楽しめるだろう。

 なお、本作の主要人物が同監督の『殺人ワークショップ』『コワすぎ 最終章』にも出てきているので、本作が気に入ったならばぜひ見てみて欲しい。




弟切草

(2001年公開 下山天監督) ★☆☆☆☆
《2015-08-14》   


ある日突然、実の父の死を知った奈美(奥菜恵)は、自らの出生の秘密を探るため、ゲームクリエイターで元恋人の公平(斉藤陽一郎)と共に、父が遺した洋館を訪れる。それは、弟切草に覆われて山奥にひっそりと佇んでいた。そこで2人は、奈美の父が残酷絵で有名な画家・階沢蒼一(minoru)であること、奈美に直美という双子の妹がいたという驚愕の事実を知る。さらに、直美のものと思われるミイラ化した少女の死体を発見。逃げ出そうとしたものの、急な嵐に阻まれて一泊を余儀なくされた奈美と公平に、更なる恐怖が襲いかかる……。
(dTV)

 SFCの同名ゲームの映画化。……といっても、正確にはSFCを元にした小説を原作として、という関係になっている。
 割と最近見たのだけどレビューするためにわざわざ二周目。ゲームはたしかちょっとやって積んだっきり。

 映像はかなり特殊な感じ。色彩感覚が特殊というか、極彩色を使われておりかなり異質な印象を受ける。作中に使われているCGもかなり浮いて見えるというか、おそらくわざとゲームのポリゴン的に作っている。実験的であるし、この辺りはかなり好みが分かれるかと思う(私は、尺が短いのである程度は許容出来たが、レビューサイト見るに評判は最悪だった模様。見づらい・目に悪そうってのは大いに同意する)。

 序盤のPOVでの館探索は結構雰囲気が出てはいる。薄暗い屋敷の中で探索者視点から見る階沢蒼一の絵はとにかく不気味で良い。時折映しだされる謎の監視カメラの映像もなかなかに気味が悪い。
 ……しかし残念なことに、本作はホラー要素が妙に薄い。かなり館の雰囲気に助けられている。「ホラー」ってものには色々あるけれど、本作は廃墟探索のドキドキだけはある。だが、それだけといった感じもとても強い。
 オチに関しても、二転三転するものの「だからどうした」止まりで、何もストーリーにまったく生きていないのが難点。二度目の「アレ」(ぼかした表現)も、観客置いてけぼりでギャグにしか見えない。

 本当、雰囲気だけは好きなんだけど、評価は出来ないな……館の雰囲気だけに1.5を付けたい気分。

+クリックでネタバレ感想



オトシモノ

(2006年公開 古澤健監督) ★★☆☆☆
《2017-07-09》   

[幽霊][呪い]

拾っては、いけない

“オトシモノ”の定期券を拾った人々が次々と行方不明になる事件が起こる。消えた妹を捜す女子高生・木村奈々は、クラスメイトの藤田香苗と共に謎の解明に乗り出すのだが…。
(Amazon)

 ある女が無くした「落とし物」を拾った人が次々と亡霊みたいな感じになっていくホラー。若い頃の沢尻エリカや小栗旬が出ている。若槻千夏はいまとあんまり変わらないな……。
 わりとポピュラーなタイプ。多そうで意外と少ない、鉄道ホラーでもある。撮影で駅構内や電車を使う都合上、ある程度予算がないと鉄道ホラーは作れないということか。
 良くも悪くも普通な感じ。映画として押さえるところは押さえており、見どころも作れてはいる。が、そこまで怖くもなく、ホラーというよりは女の子の友情モノとして見るのが良い気がする。
 結局一番気になることが明かされないなど、個人的には最後の方があまり好きではないのだが、ホラーにしては余韻がいいので、そういうのが見たい人にはおすすめ。




おろち

(2008年公開 鶴田法男監督) ★★★★
《2015-08-09》   

[呪い][じわじわ][狂気][美少女][音楽がいい]

美の崩壊は、女の最期 29歳を過ぎると、姉妹は壊れ、狂い始める……。

人の世をさまよい、人間の心の闇を見つめてきたおろち(谷村美月)が家政婦として潜り込んだ門前家には、二人の美しい姉妹がいた。当家の女性は29歳を過ぎるころには突然、その美ぼうが崩れ、果ては化け物のように醜く死んでいくという。ある日、妹の理紗(中越典子)は死にゆく母親の口から、もう一つの門前家の秘密を打ち明けられる。
(シネマトゥデイ)

 楳図かずおの漫画の実写化。
 谷村美月演じる不老不死の女性・おろちの目線から語られる、ある姉妹の一代記。ホラー版家政婦は見たといったところ。

 仲の良かった姉妹のギスギスと迫り来る運命への恐怖を、木村佳乃が熱演している。後半にかかるまでやや退屈ではあるし、楳図かずおの漫画に代表されるように不条理なシーンが目につくが、ラストはまさに壮絶である。このシーンの為だけに、いままでのものを積み重ねていたと言っても過言ではない。
 またエンディングの柴田淳の「愛をする人」の雰囲気も、この映画と合っていて非常に良い余韻を与えてくる。

 本作はホラー的な恐怖はほとんどないものの、画面の(色使いの)綺麗さ、木村佳乃の怪演もあって、充分佳作であるといえるだろう。




怨廻

(2005年公開 福居ショウジン監督) ★★★☆☆
《2015-09-21》   


引きこもり生活を続けるアキコの唯一の楽しみは、タケシという男性が運営する個人サイトを眺めることだった…。
(Amazon)

 レンタル用パッケージに「輪廻に続くJホラー」云々って書かれていたような気がしたが、当該作品とは無関係もいいところ。雰囲気からして全く違うので、そういうのを期待して見ると肩透かしを食らう。なんだこの売り文句……。

 最序盤は延々と引きこもりの生活を描いていて「なんだこれ……」と思わされるが、そこからの展開が普通のホラーとは異なっていて「!?」となる。話のネタ自体はそれなりに求心力があるのだが、ややテンポが悪い……というか、全体的にダラダラとしている。前衛性は感じ取れるのだけど……。
 三十分経っても、なかなか話が進まず、登場人物による怖い話が挿入される。この話は妙にテンポが良い。  四十五分経ったあたりから、ようやく色々なことが起き始める。いや、実際はかなり早くから起きてはいるのだけど、話が本格的に進み始める……が、やはり何が起きてるのかよくわからない。狙ってやっているのだろうとは思うのだが、かなり人を選ぶことになっている。少なくとも「Jホラー」を期待して見る人にはまず向かない。

 ある意味怖いことは怖いのだが、この怖さはいわゆる幽霊的な怖さではほとんどない。世にも奇妙な物語の感覚に近い。意外なオチもあることはある。一応、伏線も用意されていたことがわかる仕組みになっている。個人的に嫌いではないものの、積極的におすすめはしない。少々変わったホラーを見たい方は見てもいいかもしれない。しかしいかんせん長いし、ある部分まで間延びしすぎているというのが難。





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