baseline和ホラー映画日和 い

 ISOLA 多重人格少女(2000) ★★☆☆☆
 1303号室(2007) ★★☆☆☆
 稲川淳二の餌食 (2000) [シリーズ] ☆☆☆☆
 稲川淳二の餌食2 (2000) [シリーズ] ☆☆☆☆
 遺物 未解決事件流出証拠検証記録 Vol.1 遺品 (2009) [シリーズ] ★★★☆☆
 遺物 未解決事件流出証拠検証記録 Vol.2 呪いのエレベーター (2009) [シリーズ] ☆☆☆☆
 遺物 未解決事件流出証拠検証記録 Vol.3 トンネルに消えた子供たち (2010) [シリーズ] ☆☆☆☆
 いま、殺りにゆきます ★★★☆☆


ISOLA 多重人格少女

(2000年公開 水谷俊之監督) ★★☆☆☆
《2015-08-15》   

[狂気][超能力][超常現象]

私の中に潜む、十三番目の悪魔

阪神大震災後の神戸。人の感情を読みとるという特殊な能力を持つ由香里は、ボランティアにやってきた神戸でひとりの少女に出会う。その少女・千尋は、何人もの人格を有する多重人格者だった。ひとりひとりの人格と対話するように、心を読みとってゆく由香里。だがその中には、恐ろしい悪意を持つ13人目の人格“ISOLA”が潜んでいた・・・。
(allcinema ONLINE)

 貴志祐介の「十三番目の人格」を映画化したもの。
 貴志祐介はわりと好きだったが、本作はさほど思い入れはない……。

 物語は阪神大震災直後の神戸で始まる。他人の心が読めるエンパス能力の所持者である主人公が、ある多重人格障害の少女に出会う。
 物語全体的に響き渡る水の音なんかは不気味ではある(そしてこれは一応伏線でもある)。しかしそれくらいで、物語に起伏がほとんどなく退屈な感じが否めない。物語の大筋を追うので精一杯というか駆け足気味で、連続不審死やら呪いやらの緊張感というものもほとんどない。
 さらに大ネタ自体も2/3ほどで明かされてしまう。せっかく序盤はカメラワークで上手く隠していたのに、なんだったのか。原作はかなりキモだったような気がしたんだけど……。

 最後まで見てみると、結局のところISOLAとのいざこざで、結局千尋が多重人格だという設定があまり生きていない。千尋の普段もほとんど描かれていないので、ISOLAとのギャップたいしてもない。そもそもISOLAの動機が描写されておらず、妄執の説得力に欠ける。
 ホラー要素に関しても皆無に等しい。原作ではもっと凶々しい感じで描かれていた記憶があるのだけど、やっぱ実写だと無理があったのだろうか。

 オチに関しても、かなり嫌な展開が原作には待っていたのだが、本作では丸々カット。まるで美談のように終わっているのが個人的にかなりマイナス。
 とまあ、散々言ったけれど、話の筋を追うだけなら本作でも別に構わないかもしれない。わりとハッピーエンドの怖くないホラーを見たい人にも、少しだけオススメ出来るかもしれない。




1303号室

(2007年公開 及川中監督) ★★☆☆☆
《2017-07-07》   

[幽霊][狂気][怪物]

あの部屋にいる人は、みんなみんな死んじゃうんだよ。

真利子が訪れたのは、海の見える高級マンションの1303号室。ここに引っ越してきたばかりの妹・沙弥香が謎の投身自殺を遂げたため、その後始末にやってきたのだ。だが、マンションにやってきた刑事の話から、この部屋を借りた若い女性がみな投身自殺をしていることが判明する。この部屋にはなにがあるのか? やがて真利子は、かつてこの部屋に住んでいた母と娘の壮絶な情念のドラマを知る。そして真利子の周囲でも、奇妙な出来事が起こり-----。
(Amazon)

 何人もの女性が唆されるようにベランダから転落する1303号室。その部屋で妹が死んだ主人公は、謎を追う。
 序盤から中盤までの、なんだか嫌にジメジメした雰囲気は、いかにもジャパニーズホラーといった感じがある。それくらい直球のホラーをやっている。
 特に遺族である主人公と母親の確執も、なかなか暗黒っぽくてよい。この要素は、もちろん物語的にも重要な機能を果たしている。マンションのベランダから落下するシーンの安い合成感はかなりあるが、それ以外は結構怖い。
 ……のだが、後半。序盤の鬱々ジメジメした暗い雰囲気が嘘のように、なんだかしっちゃかめっちゃかになる。「エクソシスト2」のラストっぽいというかなんというか。ともかく序盤のじんわりした空気が一掃されてしまう。
 オチに関しても、人間愛的なノリを入れたせいで「あー」となってしまったし、その他の部分も中途半端。




いま、殺りにゆきます

(2012年公開 千葉誠治監督) ★★★☆☆
《2017-07-11》   


ひょんなことから日常の闇に足を踏み入れた少女たちの姿を生々しく描く。「わたしのししゅう」ほか全5話を収録。森田涼花ら人気戦隊ヒロインが出演。
(Amazon)

 平山夢明の同名小説の映画化で全五話のオムニバス。
 この小説は怪異系怪談ではなく、人間の怖さを描いたもので、この映画も同様に幽霊などは一切出てこない。出てくるのは、頭のネジが一本以外すべて抜け落ちてしまったような狂人たちだ。
 浮浪者から詩集を買った女子高生を襲う恐怖「わたしのししゅう」、古本屋で画集を買った女学生がそこに入っていたDVDを見ると……「おまけ」、小学生の頃の同級生が突然話しかけてきたが……「やあ、カタオカ!」、公衆トイレに入ったOLを襲う悪意「さよなら、お~える」、ストーカーからかかってきた電話「いま、殺りにゆきます」の五編。
 恐怖の種類にはいろいろとあって、例えば霊的存在や怪異。これはまあ、科学では説明できないことや、その超常的な能力によるものが大きい。だが本作はそうではなく、「自分と同じ姿をした生物が、何をルールに動いているか理解できない」という部分にあるだろうと思う。そういうことをまじまじと感じさせる一本に仕上がっている。
 どの話も「女性が襲われる」という共通点こそあれどバラエティに富んでおり、そして何が起きるか予測しづらいシナリオのため、飽きずに観られる。特に「いま、殺りにゆきます」の(作者の)悪意は本当にえげつない。
 ……のだが、一方で度の過ぎた恐怖はコメディと区別が付かない部分もある。また不謹慎なネタがないわけではなく、両方の意味でかなりクセが強い作品なので注意は必要。






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