(シネマトゥデイ)
まず初めに、本作の評価が『★3』となっている理由について。
本作をホラー映画として見た場合、おそらく普段通りのレビューの評価方法ならば、『★1か2』をつけていただろう。だが……本作は、その通りに評価して埋もれさせるには惜しい部分が、『ホラー以外』の部分にある。なので今回は、かなり例外的にこの評価を付けさせてもらった。一応もう一度いうと、『ホラー映画』としては★1~2くらいの出来であるので、注意して欲しい。
脚本家志望のうだつの上がらないリサイクルショップバイトの青年が、買い取りのダンボールの中から奇妙な冊子を見つける。ホラー映画の脚本を書いているので、そこに描かれていた呪術的な儀式に興味を持つ。その夜、彼が山道を走っていると、林の奥から釘を打つ音が聞こえてきた。「これを見れば、脚本のインスピレーションが湧くかもしれない」と、覗きに行く……。
丑の刻参りは、呪術の過程を人に見られた場合、その目撃者を殺害しなければならないというルールがある。本作も同様で、目撃した主人公を、呪術をかけていた女が追うというのがメインの話となる。最初こそ多少は気味が悪かったが、本作のホラー描写はあまり怖くない。どういうわけか、追手がどんどん増えていくのだが、この追手にしても変な動きをしているだけの人間なので、ゾンビ映画を見ている感覚に近い。
おそらく一番怖いのが、大元の女なのだが、これに関してはあるバックグラウンドが存在するため、どちらかというと「しんどさ」の方が強い。ホラー部分はこれくらいしか語るところがない。
さて、出来のわりに高評価の理由、『ホラー映画以外の部分』について。本作は序盤から、気分が滅入ってくるような要素が、とにかく次々と並んでいく。心当たりがない人ならばそうでもないのだろうが、ひとつひとつの描写が重くて、刺さる人にはとにかくきつい。自分はわりとそうでした。ここに描かれる彼の生活は、どうしようもない行き止まりであり、それが容赦ない。そしてその悪意に似た描写の結果が、ラスト周辺で突きつけられる。本当にこの部分だけは大好きで、ある種偏愛的な作品だと言える。
惜しむらくは、ホラー要素とその部分が、あんまり関係がないこと。そして本作、同じことを何度か繰り返すせいで尺が長く、ダレてしまうというところだろうか。
裏ホラー
(2008年公開 白石晃士、福田陽平監督) ★★☆☆☆
《2017-07-09》
日本ホラー映画界の第一人者、一瀬隆重がプロデュースを務めたフェイクドキュメンタリーホラー。「呪いの祠」「襲われたアイドル」「呪術!紙人形」「手を振る女」「幽体離脱」「スプーン曲げ」「飛び降りる女」「トシオさん」ほか、全12話を収録。
(Amazon)
番組で放送禁止となった封印映像。視聴者から送られた曰く付きのムービー。それらを紹介していくというもの。各映像は5分程度。元々は公式のサイトにアップされた動画を纏めたものらしい。直球・人間の闇・UMAなど、バラエティ豊かな短編集にはなっている。
昔の番組素材を使っているという理由で全体的に画質や音声が悪く、それがまた絶妙に怖い。さらに、ちゃんとその年代にそった服装や小道具を用意できているのでリアリティが増している。各話が短いので、夏場にテレビでやるホラー特番のような雰囲気がある。
……というのは前半までで、後半は白石晃士色が異常に強くなっていく。どんどんと作り物めいていったり、ギャグ的なノリになっていくのである(事実、
『ノロイ』のスピンオフのようなものもある)。呪怨のパロディの雰囲気で清水崇が出てきたのには笑うが、これはそんなに面白いネタでもなかった。
ちなみにインターネット上で有名な、ナポレオンズのスプーン曲げの映像は、本作がソース元である。