baseline和ホラー映画日和 の

 のぞきめ(2015) ☆☆☆☆
 Not Found 14 -ネットから削除された禁断動画-(2014) ★★★☆☆
 紀子の食卓(2006) ★★★★★
 ノロイ (2005) ★★★☆☆
 ノロイエ -報道捜査最前線より-(2005) ☆☆☆☆
 呪い面(2014) ☆☆☆☆☆
 呪われたパワースポット(2011) ★★★☆☆


のぞきめ

(2015年公開 三木康一郎監督) ★☆☆☆☆
《2017-07-02》   


TV局で働くAD・綾乃は、ある青年の怪死事件を取材することに。青年の恋人は狂ったように「のぞきめ」の仕業だと泣き叫ぶ。次第に関係者や綾乃自身にも「のぞきめ」の悲劇が起こり始め…。
(Amazon)

 ホラーとミステリの融合させた作風の作家・三津田信三の小説の映画化。原作は既読。元はホラー小説なのであるが、そこはミステリ作家。推理小説的な一面もある作品なのだが……元AKBの板野友美が主演。パッと見はアイドル映画な気がしないでもない。
 原作は物語の構成上の問題でそのままの映像化が難しいためか、はたまた大人の事情か、板野友美が演じるオリジナルキャラが視点者となっている。この時点で勘のいい方ならばわかるはずだ。本作は原作とは全く別物であり、「覗いてくる怪異」の設定を使っただけの作品だということに。
 原作であったミステリ的な展開・ネタはほぼ使われず、単なる「覗いてきて、人を狂気に至らしめ、捻じり殺す怖い少女」という、Jホラーにありがちな恐怖キャラクターとの対決みたいなのがメインとなる。それで謎の特効アイテムが出てきて亡霊を改心させようとしたりする。なんだこれ……そんな話だったっけ……。
 オチに関しても、ラストのシーンでされるべきある演出がされないという、なんだか「大人の事情」を強く感じるような雰囲気で絶妙にキツイ。というかこのシーンを差し込む理由がよくわからないし、板野友美の演技がアレなのでな……。
 強いて良かった部分を挙げるならば、本作のホラー描写の中心である「目」自体はそこそこに怖い。もっとも作中で何度も繰り返して画面に出てくるため、食傷気味にはなるのだが。あと音楽(BGMのほう)はわりといい。
 三津田信三のファンであればあるほど別に見なくてもいい作品。




Not Found 14 -ネットから削除された禁断動画-

(2014年公開 オムニバス) ★★★☆☆
《2017-06-29》   


インターネット上に公開されたものの、過激さやプライバシー問題により削除された禁断動画を集めた映像集第14弾。あるスキー場で、ゴンドラに乗って楽しそうに写真を撮り合うカップル。しかしその背後には…。「スキー場で…」ほか全8編を収録。
(キネマ旬報社)

 過去にインターネットから削除されたという過激な投稿動画を、その詳細と共に流すオムニバスもの。

ネット乞食
 ひきこもりの女性が生放送で動画配信している番組がある日を境にパタリと途絶えた。
踏切
 ある高校生が自殺の名所の踏切に行くのを映した動画。
もう一人いる
 友人と遊んでいる光景をウェアラブルカメラで撮影した動画。
事故物件ツアー(前後編)
 事故物件を紹介していたサイトの更新が途絶えた。その最後に残された動画。これが一番長く、力も入っている。
ねずみ取り
 あるサイトにアップされていたという、隠しカメラで撮影された謎の動画。
最恐心霊スポット 突撃シリーズ第四弾
 このビデオの制作スタッフたちが心霊スポットである旧小峰トンネルへ突撃するという動画。
スキー場で…
 新潟のスキー場で撮影された映像。

 各々の短編のアプローチが違っており、バラエティ豊か。この手のオムニバスにしては飽きない作りになっている。一方で長さも質もピンキリという感じで、ちょくちょく微妙なのも挟まれる。撮影した道具をちゃんと設定に合わせているらしく、リアリティはそれなりにあるのは良い。
 単に投稿風動画を流すのではなく、ドキュメンタリー風に取材撮影なども交え(「事故物件ツアー」など)ていて、低予算ながらそれでも単調にならない工夫が見られる。

 めちゃめちゃ面白いというわけではないので積極的には勧めないが、丁寧には作ってあって見る点がないわけではないので、機会があれば見ても良いかもしれない。



紀子の食卓

(2006年公開 園子温監督) ★★★★★
《2015-07-20》   

[ネット][鬱][哲学][狂気][暴力][美少女]

あなたはあなたの関係者ですか?

田舎に住む17歳の平凡な女子高生・島原紀子は、家族との関係に違和感を覚えていたが、ある日インターネットのサイト「廃墟ドットコム」を知る。彼女はそこで知り合った女性を頼って東京への家出を敢行、「レンタル家族」という虚構の世界で生きていくが……。
(wikipedia)

 軽快なピアノ曲から始まる。「家出した」という吹石一恵のモノローグ。序盤は延々と主人公である紀子の人となりが一人称で語られる。父の剥いたみかんから「みかんちゃん」へ連想的に話は続けられる。家族が嫌いなわけではないが、ノリについていけない……という十七歳あたりには特有の、思春期ならではの「モヤモヤとした感情」がよく表れてる。そんな彼女は停電と同時に家出をし、東京に飛び出す。過去との決別として、コートの糸くずを千切る演出がうまい。
 本作は正確にはホラーではない。ジャンルは……と訊かれたらなんと答えればよいかわからない。サスペンス、ヒューマンドラマ、サイコスリラー……そのどれにも当てはまるようで、やはりどれも的外れな気がする。
 廃墟ドットコムというサイトの『上野駅54』というハンドルネームが、同監督の『自殺サークル』に関わってくる。時系列としては「自殺サークル」を挟む形で存在する。また自殺サークルの存在については、妹のユカの文章という形で語られる。
 紀子の家出をきっかけにしても、彼女の元いた家庭は崩壊する。問題が「あるともないとも言えない普通」の家族の崩壊。「理想的な」あまりに「理想的」なレンタル家族と紀子――『ミツコ』の出会い。父親の感情が決壊するシーンはよくできている。

+クリックでネタバレ感想



ノロイ

(2005年公開 白石晃士監督) ★★★☆☆
《2017-06-27》   


2004年4月、1人の怪奇実話作家が「呪い」をテーマにしたドキュメンタリーを完成させた直後、失踪した。『ノロイ』と題されたその作品は、あまりにも衝撃的な内容のために発売が見送られた……。そしてついに、この問題作をあなたは目撃する!
(Amazon)

 2004年に実録怪奇作家・小林雅文がドキュメンタリービデオとして制作しようとした「ノロイ」というビデオを、彼が行方不明になった後の2005年に映画に再編集した……という、白石晃士監督得意のフェイクドキュメンタリー作品。
 「ビデオ制作用の素材」を数珠繋ぎのようにした構成を採っていて、素材だけあってあまり演出などを入れていないという雰囲気になっている。後半こそ「わざとらしさ」が目立ってきてしまうが、後の白石作品のような突飛なキャラクターは少なく、演出の過剰さはない。それ故に、その大人しさが不気味さを演出できていて、「じわじわと怖がらせるホラー映画」としては上出来。
 また、一見脈絡の読めない心霊番組の映像が流されるのも不安さが高まっていく。この作中VTR、アンガールズや飯島愛といった有名人が多数出演しているため、「ひょっとしたら実際の番組なのでは?」とリアリティを強くしているのも、モキュメンタリーとして上手くできている。

 やや差別的な表現や露悪的な部分はあるものの、伝奇的な雰囲気を纏い始める。作中に撒かれた伏線は、数珠のように、或いは結ばれた紐のように連なり、ラストへ向かっていく。地方の村の伝承だとか、そういうのが好きな人ならば楽しめるだろう。

 一方で、「モキュメンタリー」という性質上の欠点で、盛り上がりる部分が少なく、やや淡々としているところはある。また連動して、明確な「恐怖!」といったシーンは少ないので、そういう「怖さ」系のホラー映画を期待すると期待はずれになる可能性もある。「真偽を交える」「淡々としている」という恐怖の質は、初期の「放送禁止シリーズ」に近いかもしれない。

 まったくの余談だが、本作のヒロインともいえる松本まりかさんがめっちゃ可愛い。FF10のリュックなどの声優もしていた女優さんだが、あの声が好みならば是非見てみて欲しい。



ノロイエ -報道捜査最前線より-

(2005年公開 クリエイティブアクザ?監督) ★☆☆☆☆
《2015-09-05》   


封印番組発掘シリーズ第2弾。一般投稿された1枚のDVDに収録されていた禁断の恐怖!ある報道特番を収録したその映像には驚愕の霊体験が取り上げられていた。バスルームの壁に滲む異形、不可解すぎる謎の声…。今その封印が解き放たれる。
(キネマ旬報社)

 DVD制作スタッフの元に、誤って別の録画してしまったというDVDと共に一通の手紙が届いた。それは「報道最前線」という報道番組であった。その映像の真偽を追う、という内容。
 一応、フェイクドキュメンタリーで、作品内にその報道番組がそのまま収録されている。

 わざわざCMをモザイクかけて早回しして見せたり、テンポが悪い。……というか、作品の中に「報道番組」がまるごと入っており、余計な普通の欠陥住宅のアレコレについてのシーンがあまりにも長くて余計過ぎる。「提供」とかかなり細かいとこまでフェイクを作りこんでる。だけど手が込むのはいいんだけどさ……。
 で、作中の報道番組「報道最前線」の中でのVTRで、ホラー演出がされる。VTRに妙な怖い声が入るのだが、プライバシー加工された撮影者の声と被ってもモザイクがかかっていない、など爪の甘さが目立つ。ただ、POVでの映像は上手く乱れていて結構気味が悪い。

 なんとも微妙な作品。やろうとしてること自体は、面白いことは面白い。フィクションの中にフィクションを作り出し、更にそれを外部に広げることで「気味の悪さ」を現実世界に表現しようとしてるのだろうと思う。VTR中のオチも結構いいネタではある。
 ただいかんせん、全体的にエンタメとして面白くない部分がかなり多い。報道番組という体をとったのも、真面目な番組とオチとの乖離を狙ったのだと思うんだけど、その報道番組パートがかなりの枠を占めるというのに面白くない。
 また本作では、「謎の解明」は一切なされない。作中で「次作を作ります」とは言っているが、結局作られていないし、それが本心だったかもあやしい。

 面白くないので決しておすすめはしないが、やろうとしたことは個人的には結構好き。



呪い面

(2014年公開 ?監督) ☆☆☆☆☆
《2015-09-07》   


TVで紹介され話題を集めた、関わる者が不幸になるという「最凶の呪い面」の謎に迫るホラードキュメンタリー。取材した雑誌記者が重傷を負うなど関係者が次々と不幸に見舞われ、現在は京都の寺院に封印されている「呪い面」の全貌が明らかに。
(キネマ旬報社)

 某番組とかで取り上げられていた「呪い面」に関してのドキュメンタリー……というべきか。正直いうと、何がいいたのかまったくわからない。
 次々とタレントが出てきて「呪い面はすごいんですよ」「呪い面は怖いんですよ」というんだけど、どの話もFriend Of A Friendレベルというか、はっきり言って視聴者から判断のつかない話ばっかりなんだよなぁ。その発狂したとかいう被害者に取材しようとしても、「取らんほうがええ」って言って終わる。そんな感じで次々と各地をたらい回しにされる。「知り合いが~した」「~が倒れた」とか、本当にそればかり延々と映される。かなりきつい。その事件に巻き込まれた当事者が一切でてこないので、見てる人はなんともいえない。信じるべきにも、疑うべきにも、判断材料がない。
 そもそも「本物だから呪い面は表には出しちゃいけない」「このネタは使わない方がいい」と語っているのに、この映像が流通に乗ってるってのが根本的におかしいよね、ダブルスタンダードだよねと。
 私はオカルトを根底から否定する人間ではないのだけど……。作中ではガリガリガリクソンが結構、いいことは言っている。「呪い面に関わったということで、なにか起きた時に呪い面のせいにしている部分がある」みたいなこと。要するに思い込みによる物体の呪物化だよね、と。それが過剰に重ねられると、そういった「呪物」にもなるよ。と
 ラストで公開される呪い面は確かに不気味なんだけど(いや、ネットで見たことあるんだけどさ)、それよりも途中で取材拒否した女の人がエンディングテーマ(!)を歌っていったっていのが一番の衝撃だった。



呪われたパワースポット

(2011年公開 内田直之監督) ★★★☆☆
《2015-09-08》   

[呪い][幽霊][短編集]

あなたが訪れたあの場所は、大丈夫ですか?

ニキビを気にしている高校生の朋子は、雑誌のパワースポット特集で紹介されていた美肌に効果があるという井戸水を飲むが……。「美肌になれる水が湧く井戸」ほか全5話を収録。
(GyaO)

 いわゆる「パワースポット」を題材にしたホラー短編。OPの出来がそれなりにいい。

「美肌になれる井戸」
 主人公はできものに悩まされていたが、友人から「美肌になれる井戸」というものを紹介してもらう。
「安眠効果のある山」
 不眠症にかかっている主人公は友人たちとパワースポット巡りをする。
「子宝に恵まれる滝」
 子どもに恵まれない夫婦がパワースポットで神頼みするが……。
「復縁が叶う神社」
 雑誌のライターをやってる幽霊の見える女性が、復縁の神様が祀られている神社に赴く。

 映像というか写し方がかなり綺麗。だがその分、細かいところがやたら気になる。飲んだばかりのペットボトルを投げたのに蓋が閉まっていることや、階段を上る音が入っているべき場所で入っていないなど。
 ストーリーのアイデアは、中にはいいものもあるのだが、どうしても先が読めてしまうものばかり。短編だからか、その「呪い」に説得力となる原因がまったく描かれず、単に正体不明の怪奇現象に襲われる話どまりで終わっているのも難。
 ホラー描写に関しては、いわゆる声にエフェクトつけての「ヴァー」でびっくり、という感じのものではなく結構地味……というか、地味なとこは地味に怖がらせ、時には少し派手にと、緩急がつけられており好印象。
 ただ、本当にパワースポットは単なるきっかけであり、あんまり関係ないという。特に実在してるパワースポットをモデルにしているわけでもない、本作を「パワースポット」として推すにはやや弱い気がする……というのがとりあえず三話まで見た感想である。

 しかし4話の「復縁が叶う神様」は少々毛色が変わっている。主人公もキャラ設定がしっかりしている(ホラーには珍しくめっちゃ明るい)し、神社にまつわる言い伝えが掘り下げられ、そこが「パワースポット」として呼ばれる理由が明かされる。
 そして最終話である5話。なんとこの話で、いままで薄っすらと示唆はされてたもののよく分からなかった各話の繋がりが、その登場人物たちが集まり、核心にと迫っていく。ホラー描写にも、しっかりと伏線を忍び込ませていたのだからびっくりだ。
 多少強引ではあるものの、この手のB級っぽいホラーにしては手堅くまとまっている。しっかりと解決まで描き切っているし、かなり面白い解決法を採っているのもオリジナリティがある。

 本作は派手さこそないものの、案外綺麗に纏まっており、単なるホラーでは終わらないというちょっと異質のB級ホラー映画である。決してすごくはないが、「容易に怖がらせよう」というのをやめてシナリオを真面目に作っているのを感じれる、結構面白いと言える作品だった。





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