baseline和ホラー映画日和 ふ

 不安の種 (2013) ★★★☆☆
 fuji_jukai.mov (2016) ★★☆☆☆
 ブタカリ。~呪いの使徒~ (2012) ★★☆☆☆
 フリーキッチン (2014) ★★★★
 震える舌 (1980) ★★★★


不安の種

(2013年公開 長江俊和監督) ★★★☆☆
《2017-07-13》   

[呪い][幽霊][狂気][怪物][美少女][じわじわ]

僕の家には、オチョナンさんが、います。

バイク便ライダーの巧は、配達の途中でバイク事故に遭った青年・誠二に助けを求められるが、そこで恐ろしい怪異現象を目撃してしまい…。
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 中山昌亮の基本一話完結のオムニバス形式のホラー漫画が原作。なのだが、この映画はなぜかストーリー仕立てになっている。また起こる場所がバラバラだった現象も、起こるのが一つの街でということになっている。
 不気味さはなかなかあり、仄暗い画面のエフェクトがそれを増している。また原作が短い話なので、各怪異までの前ふりは短く、ホラー的なテンポはそこそこよい。が、バラバラだった事象にストーリー性を付加した結果、間延びした部分がないでもない。
 またこの物語性の付加というのが曲者で、本作は時系列が連続的ではない。なのでその部分を推測しながら見れる人なら楽しめるが、「ホラーを見たい」と思って見始めた場合、イライラする可能性はある。意外な展開があり個人的には好きではあるものの、理解しきれないところもある。
 あとオチョナンさんの話に付き物の「場所は伏す」だが、本作は舞台となる町の名前が堂々と出ており、ストーリーに関わってくるのでこの言葉は出てこない。舞台の描写は本当に陰鬱で気味が悪く廃退的で良いだけに、オチョナンさんとはなんだか食い合わせが悪いのが残念。




fuji_jukai.mov

(2016年公開 坂下勝己監督) ★★☆☆☆
《2018-06-28》   

[POV][モキュメンタリー]

再生される恐怖
その動画…閲覧注意

自殺スポットとして知られる富士の樹海を舞台に描くホラー。富士の樹海での番組ロケ中、出演者がスマートフォンを発見。そこには自殺願望を持つアミと、人の死ぬ瞬間が見たいヒナタとみーたんという3人の女子高生の動画が残されていた。
(Amazon)

 「富士の樹海に落ちていたスマホの映像」に、その周囲へのインタビューを交えていくという、POVメインのモキュメンタリー作品。自殺しようとする女子高生が、それを見学しにきた女子高生二人と樹海で迷子になるという話。
 「インタビューや関係者の話」を挿入する本作の雰囲気は、『放送禁止』シリーズに少し近く、一応ネタが用意されている。のだけどフェアさがあまりなく、上手くきまっているかというと……。というか後出しの伏線が多すぎる。それと本作はモキュメンタリーという体なのにカメラワークが良すぎたり、途中で出てきた謎の人々の話が無意味だったりと微妙なところはかなり多い。
 ただ観客の視線誘導やヘイト管理はなかなか上手くいっており、内容としても丸々つまらないわけでもない。もう少しフェイクものというところを意識していたらなぁという感じで終わってしまっている。設定自体も良かったのでもったいない。




ブタカリ。~呪いの使徒~

(2012年公開 山本淳一監督) ★★☆☆☆
《2015-07-25》   

[狂気][暴力][怪物][呪い][コメディ][グロ]

それは、復讐の連鎖を呼ぶ禁断の呪いの箱……。

復讐の念が生んだモンスターが襲い掛かるクリーチャーホラー。息子を失くし失意の日々を送る峰岸。ある日、謎の新興宗教が現れ「ブタカリ」という箱を置いて行く。それは、憎む人間の名前を呼びながら己の肉体の一部を入れると救われるという箱で…。
(TSUTAYA)

 無駄にインパクトのあるジャケット写真とタイトル。B級臭がプンプンするが、まさにそのようなバカモンスターホラームービーである。

 出てくるブタカリ様のインパクトは他のホラーモンスターの追随を許さない。その恐るべき姿は出来れば事前知識なしで、メタルをバックに襲いかかってくるブタカリ様を見てほしい。
 しかし、いかんせん作りがチープ。暴力シーンがどう見ても実際には当たっていない。また全体的にカットカットが細かすぎて気になる。
 その分、物語はわりとテンポよく進む。特に森の不気味さは異常に高い。子供のシーンでも思ったが、いい意味で非常に違和感のあるカットを作り出せている。そういう点で見ればホラーとしてはなかなか上手い。

 物語は大きく二部に分かれており、前半が息子を殺された父のブタカリ様による復讐パート、後半がその復讐で殺された恋人の復讐パートとなっている。
(おそらく)低予算ながら、ネタとしてのエンタメ性は高い。ストーリーを深く気にせず、友人と酒でも飲みながら見ると吉である。

 なお一部、虫の描写があるので注意が必要である。


+クリックでネタバレ感想



フリーキッチン

(2014年公開 中村研太郎監督) ★★★★
《2017-07-24》   

[狂気][コメディ]

最初の肉は、父さんとその愛人でした

内気な高校生・ミツオと母親のキョウコが暮らす家では、幼い頃に母が殺した父とその愛人を食して以来、人肉料理が並ぶようになっていた。ミツオは、この異常な環境から抜け出したいと思いながらも母を拒めずにいた。そんな中、ある日出会ったペットショップの店員・カナに惹かれはじめるミツオだったが…。
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 捕えた人の肉を料理して出す母親と、人肉を食べるうちに「どんな年齢・性別・体格か」などがわかるようになった少年。そんな彼は、ペットショップで働く少女に恋をして……。という福満しげゆきの漫画「味娘」を映像化したもの。
 本作は非常に静かで、とても「人食」をテーマにしたとは思えない感覚に見ていて陥る不思議な作品。いかにも『ガロ』的な雰囲気。一応グロテスクな描写もあるが、それ以上に肉料理のカットが非常に多く、お腹が空いてくる。
 人の肉を料理し続ける延増静美の虚ろな目が本当に怖いが、ホラーとしてはそのくらいの部分くらいか。それよりもブラックユーモアの度合いが高い。その静かさ故にもりあがる部分があまりないというのが、唯一とも言える欠点だろうか。




震える舌

(1980年公開 野村芳太郎監督) ★★★★
《2017-08-11》   

[病院][狂気]

おいで、おいで…幼ない娘…。
彼女はその朝、悪魔と旅に出た。

ある日少女が絶叫を上げて倒れ、病院に搬送された。瀕死の娘を救うために、両親は不眠不休で看病を続けるが…。
(Amazon)

 あらすじを見た感じでは本作は医療ドラマであり、ホラー映画ではないが、どう見てもホラー映画ですありがとうございました(というかホラー的な演出がなされているので、どういう趣向ではあると思う)。しかもオカルトなどの非科学的な部分がまったくない分、リアリティがありむしろ下手なホラー映画よりも恐ろしい。
 破傷風に冒された幼児と、その両親の苦悩を描いている。この描写が本当に秀逸で、最初は破傷風を軽く見て適当にあしらっている夫婦が、泣き叫ぶ娘の症状が悪化すると共にその事の重大さに気づき荒んでいき、身も心もズタズタになって狂っていく。多少大げさだとしても十分、実際にありえることでもあるので、そこが怖い。
 今の日本でこそ医療の進歩から、もう少しなんとかなるだろうとは思うが、やはりこの映画が怖いのは変わらず、幼いころに見たらトラウマ必至だっただろうという傑作。






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