(シネマトゥデイ)
まず本作を紹介するにあたって、説明しなければならないことがいくつかある。一つ目が本作は映画『ひぐらしのなく頃に』の続編であるということ。そして二つ目はこの『誓』は原作ひぐらしの八つある本編エピソードの中の六つ目にあたる『罪滅し編』をベースに作られている。そして三つ目、ひぐらしの各エピソードはほぼすべてが平行世界として描かれている、ということ。
これらのことを頭に入れて置かなければ、視聴者は置いてけぼりを食らうこと必至である。
キャストは前作からほぼ続投。大石さんのみ変わっている。
さて肝心の本編だが、物語は既に圭一が転校して来た状態から始まっている。前作だけを見たひとは何がなんだかわからないだろうが、本作『誓』は『ひぐらしのなく頃に』のいわゆるパラレルワールドなのである。だから前作で死んだ人間全員が生存しているというわけだ。
基本的な出来は良い点も悪い点も
前作と一緒。
多少駆け足ではあるが、ある程度は忠実に作られている。知恵留美子先生はカレーを食べようとしているし、前作でやったことを本作でくどく繰り返さない。そこらは好印象ではあるものの、単作としては不親切なので難しいところ。
原作でのレナはもう少し哀愁が漂っていた(それがよかった)のだが、描写が少ないおかげで本作のレナはただの頭おかしい人である。梨花ちゃんのシーンは改変されていたものの、ちょっとカッコ良かった。しかしこれも原作その他の視聴者でなければわからないネタ。
……ここまでなら、忠実な実写版として、それなりに評価出来た。
しかしラストのラストでかなり余計なことをしでかしてくれたのだ。詳しくは伏せるし、映画的にはやむを得ないのかも知れないが、原作では当該シーンのインパクトが最高にCOOLだった。そこを改変してしまった。その点だけでもかなりマイナスである。
……更に『罪滅し編』は派手なアクションシーンがあり、確かに映画向けのエピソードだと言える。しかし結局は八つあるエピソードの中の六つ目。
一応、解答に至るまでの伏線は張られている。だがこの話では根本的な謎は解決しないのだ。いわば、未完結のまま視聴者はほっぽり投げられたということになる。まだ前作は問題編ということで評価出来たが、本作ではさすがに評価しがたい。(余談ではあるが、私はひぐらしの解決をあまり評価しておらず、『目明し編』が最高だと思っている過激派である)
ストーリーは完全に原作既読者向け。であるが、本作が原作既読者に受け入れられるかはまた別の話である。元々、(ファン層も含め)実写化は難しい話なのである。
曲が前作やアニメ同様島みやえい子先生の「誓い」なのは、テーマとも合っててよかった。
+クリックでネタバレ感想
レナが狙撃されたりした点は映画的な盛り上げの都合上やむを得ないとはいえ、原作の終わり方があまりにも印象的で好みだった点からかなり評価が下がってしまう。
ラストが火山ガス(本当はアレだが)で全滅ってのは、あのシーンで終われなかった以上は仕方のない選択だったので、さほど気にならなかった。むしろひぐらしのある一面を描いてるといってもいいので、まあ、許容範囲。
ひとりかくれんぼ 劇場版
(2009年公開 山田雅史監督) ☆☆☆☆☆
《2015-08-22》
ルールに従って“ひとりかくれんぼ”を行うと、さまざまな怪奇現象が起こるといううわさがネットを通じて拡大。人を呪い殺せるルールのうわさを聞いた孤独な女子高生りつ子(河北麻友子)は、父親を殺したいと話す同級生の相川(碓井将大)に一緒にやろうと持ちかける。しかし、異様な雰囲気を感じた相川はりつ子の制止も聞かずに途中で帰ってしまう。
(シネマトゥデイ)
ひどい作品。最初の十分は、いわゆる「ひとりかくれんぼ」のルール説明なのだが、そこから何かが起きるまで間延びしすぎである。そして実際に何が起きてるのか確かめるまでまたゆっくりと描写され……と、ここでようやく本編が始まる。じわじわとした恐怖といえば聞こえがいいが、全体的にシーンの余白が多い。ホラー演出自体は(最初の方だけは)さほど悪くはないのだが、いかんせんテンポが無茶苦茶悪い。必要のない描写がかなり目につく。音だけ聞いていてちょっと変わった音が出た時だけ映像を見ればいいんじゃないかな、というレベル。
本作はある種の降霊術である「ひとりかくれんぼ」の恐怖をテーマにしているのだが、冷静に見ていると実はあまり関係ない。
一応ひとりかくれんぼを失敗した人が死んだり行方不明になったりしているのだけど、ひとりかくれんぼをやっていない主人公やその同僚をはじめ、ほとんど無関係の人間までなぜか強引に巻き込まれてしまっている。破綻しすぎてまったく解せない。
そもそもわざわざ降霊術をやって自分から怪異に巻き込まれている人間が、さも理不尽な目に遭っているかのように怖がるシナリオは、正直意味がわからない。いやいや自業自得だろとしかいえない。
ラストあたり、事件と関係ない主人公が病院を徘徊するパートと、主人公と縁もゆかりもないネット住民たちのひとりかくれんぼ実況がちょちょいと交互に挿入されたりもするのだが、その二つは何の関連性もない。本来、この手法は関連する二項を並列描写するから効果があるのであって、これは何も意味がない。
オチも綺麗にまとめようとナレーションが流れるのだが、どうしてそのようなナレーションがこの脚本から導き出されるのかもよくわからない。もう全体的にグダグダで、単に怖そうなシーンを繋いだだけという印象しか残らない。
褒めるところがどこにもない。
ひとりかくれんぼ 劇場版 -真・都市伝説-
(2012年公開 鳥居康剛監督) ☆☆☆☆☆
《2015-08-26》
高校の映画部に所属する倉田さくら(野中美郷)と塚本康介(鮎川太陽)は、映画部の活動として「ひとりかくれんぼ」という都市伝説の降霊術を題材に映画を撮ろうと部員を集めた。この擬似恐怖体験をホラー映画にして、コンクール入賞を狙おうと意気揚々としていたのだ。映画部副顧問の陽子先生(田中涼子)を何とか口説き、深夜の学校内の撮影に挑んだ映画部の5名。その夜、校内で始めた「ひとりかくれんぼ」の儀式が壮絶な展開を撒き起こす事に……。
(GyaO)
なぜだか日本ホラー界の一部でめちゃくちゃ人気の「ひとりかくれんぼ」を題材にしたホラー。一体何作あるんだってレベル。そんなに面白いネタでもないと思うんだけど……。
なんとこの映画では「ひとりかくれんぼ」だといってるのに、映画部のメンバー「全員」が参加しだす(人形に全員の髪の毛を突っ込む)。「ひとり」じゃないじゃねーか。そもそもタイトルが成立していない。マジでかって感じ。新機軸すぎる。
視聴者は既に異変が起き始めてると気づいてるのに、登場人物のほとんどが脳天気に「もっと撮らなきゃー!」とかふざけてたりするので、かなり温度差がある。それがすぐに改められるのならばまだわかるのだが、そんな調子で一時間近く(映画の尺の3/4近くだ)やられると、もはやイライラしてくるレベル。
映画部の活動ということで、POV形式の映像がいくつか取られている。深夜の学校ということもあり、それなりに薄気味悪い映像は撮れてはいるのだけど……ホラー的なものはなかなか起きない。というか「定点カメラ」「手持ちカメラ」「監視カメラ」の映像まで使っておきながら、ところどころでいかにも映画的な第三者視点の映像を入れるのはなんでなんだろう。中途半端すぎるし、POVどころか大ネタ自体が台無しになってしまってる。
あと音声が妙な途切れ方してて気持ち悪い(演出とかではなく、ただ単に音が変になってる感じ)。見てる環境に依るわけじゃないだろうし……。
謎の幽霊の特殊メイクだけは結構怖い。あとは夜の学校を見たい人だけどうぞ。
ひとりかくれんぼ 新劇場版
(2010年公開 山田雅史監督) ☆☆☆☆☆
《2017-08-19》
女子高生の河西栞は、音信不通の兄・元也を心配して、その家を訪ねたが、元也の姿はなかった。パソコンには、ひとりかくれんぼを既述したページが残されていた。元也の親友・白石龍二も栞とともに元也を捜す。ひとりかくれんぼと無縁だった栞と白石だったが、栞が白石にひとりかくれんぼのことを告げて以来、不気味な女の影がつきまいとい、怪奇現象が次々と起こる。実は、元也と白石が小学生時代、虐めていた黒川カオルという少女が廃校で行方不明になった事件に端を発していたのだった。
(Wikipedia)
都市伝説の交霊儀式「ひとりかくれんぼ」を題材にしたホラー。
いままで見てきた「ひとりかくれんぼ」をテーマにした作品全般に言える「ひとりかくれんぼはあまり関係ない」ということが、本作も同様に言える。ひとりかくれんぼは降霊術かあるいは自身に対する呪術なのだけど、本作はなぜかそこに「他人を呪える」という付加要素がついて、そこに過去の少女の怨念やら、振られたことの逆恨みやら、なんだかゴテゴテと雪だるま式に膨らんでいってしまい、もはやひとりかくれんぼが埋もれてどこに行ったのかすらわからない。ひとりかくれんぼを「他人を呪えるなにか」に置き換えても物語が成立してしまう。
また、強引に「ひとりかくれんぼ」にいろいろな要素を追加した結果、ストーリーが入り組んでいってしまい、見ていてかなり理解しづらい話になっている。「何作も同じテーマの作品があって区別つかないよ、もう勘弁してくれ~」って感じはある。
ホラー演出に関しては、序盤はちょっと良かったが、後半になるとダレてくるし、ラストは笑ってしまったので、単純なホラー映画として……。
ヒメアノ~ル
(2016年公開 吉田恵輔監督) ★★★★★
《2018-06-27》
ビル清掃会社のパートタイマーとして働く岡田は、同僚からカフェ店員・ユカとの恋の橋渡し役を頼まれる。彼女が働くカフェへと足を運んだ岡田は、そこで高校の同級生・森田と再会し…。
Amazon
「行け!稲中卓球部」でおなじみの古谷実の漫画の実写化。
序盤こそムロツヨシと濱田岳のボケたやりとりを中心にした恋愛の三角関係もの、といった雰囲気で、カフェの店員に惚れたムロツヨシとそのバイトの後輩濱田岳が彼女につきまとう男に立ち向かうという、予告映像の前半もそんな感じの恋愛映画の体で作られている。
なのだが物語は、タイトルテロップの前後から大きくねじれ始める。先に惚れたムロツヨシを裏切りカフェ店員の女の子と付き合う濱田岳と、その彼女につきまとう森田剛演じる男の狂気を並列して描いていく。
あまり内容には触れたくないので、とにかく黙って見てくれ。
本作は「やりきれないほどに行き止まりだった青春」の話であり、同時にその延長の話でもある。明るい人生を歩んできた観客にはどうという話ではないだろうが、少しでも薄暗い部分があるならば、このラストはグサリと突き刺さるだろう。
ビンゴ
(2012年公開 福田陽平監督) ★★☆☆☆
《2015-08-09》
これまでの死刑制度が変更されたことにより、ビンゴによって死刑判決が下されるようになった20XX年の日本。ある罪で収監された正哉(清水一希)は、殺人犯たちと共に巨大なビンゴカードの上に連れていかれる。マジックミラーの向こうでビンゴを操作する被害者家族の中に、正哉に視線を向ける真弓(松井咲子)がいた。真弓の手に委ねられた正哉の運命は……。
(シネマトゥデイ)
山田悠介の原作小説の映画化。
この作家の趣味の悪さは今に始まったことではないから、死刑執行に遊びが加えられることについては特に波風立てようとは思わない(まったく好きな作家ではない)が、今回は輪をかけてわけがわからない。
ビンゴカードに乗せられた囚人でビンゴゲームをするわけだが、なぜわざわざそんなことをするのかがわからない。本気で更生したことを見極める必要があるのならば、くじ引き以上にまきぞえを食らいやすいゲームであるビンゴを採用する必要がまったくない。誰が誰に投票したかなんかも全部運なため、救う救わないなど背景描写のほとんどが無意味。心理戦みたいなものをやろうとしているのだが、この運だけのゲームでどうして心理戦が成立してるのかも正直まったくわからない。
そういうわけで粗を探せばどんどん出てくる。
映画としてもビンゴというゲームの性質上、テンポが悪い。登場人物も多い割に描き方がいまいちで、誰がどうなってるのかわかりづらい。
ややフェアではなかったものの、オチだけは好みだっただけに、もったいない作品。オチとビンゴがまったく噛み合っていない。……とはいえ本作からビンゴ要素取ったらオリジナリティもなにもないのだが。