(Amazon)
						
						 「おんなだらけのこわいはなし」というシリーズというか企画の第一弾として制作された映画で、潔いまでに登場人物が全員女性。
						 タイトルの「グロヅカ」は安達ケ原の鬼婆伝説、そして能の演目である「黒塚」から取られている。が、別にそこまでグロくはないので、濁点つける必要あったかなという。
						 女子大の映研部を復活させてその一作目を撮るために、女の子たちが山奥の寮にやってきた……という話だが、この映研部の目的は「過去の事件の究明」であり、映画の撮影というのは嘘である。なのでほとんど映画の撮影をするようなシーンはなく、主に死体を見つけたり、疑心暗鬼になったり、能面の女に襲われたりするのが中心になる。
						
						 七年前、映研部は人が行方不明になったり、発狂し潰れたという。そこに残っていた8mmフィルムに記録された、奇妙な映像の謎を追う。この映像はなかなか不気味で、画質の悪さも相まって良く出来ている。
						 ただ本作は、どちらかというとミステリー的な側面が強い。ホラー部分はちょっとビクッとなる部分はあるが、怖さというより驚かせに近い。クローズドサークルで人がひとりずつ殺されていくので、やはりミステリーっぽい。
						 おそらくそこまでコストのかかってない撮影だと思うが、そのわりには十分楽しめた。出演者もグラビアアイドルなどだが、特別極端に演技が悪いということもない。ただ、ラストあたりがもうちょっと作りこまれていたら……というのが残念で仕方ない。そのせいでホラーとしてもミステリーとしても、中途半端になってしまっている。
						 ホラーというよりは、女の子同士のいざこざなどが見たい人にはおすすめできるかもしれない。
						
						 まったくの余談だが、福井裕佳梨が普通に出ててびっくりした。嘔吐シーンが見られるのはグロヅカだけ!!(多分)
					
					
				
				
				
				
				
					クロネズミ
					(2010年公開 深作健太監督) ★★★☆☆
《2015-08-03》   
						
						
						
						ミサト(米村美咲)のもとに、自殺したはずのアスカ(清水美花)から謎のメールが送られてくる。気味悪さを覚えながらも、その指示に従って教室へ向かうと、同じようにメールを受け取った同級生6人が集まっていた。やがて、校内に鳴り響く深夜0時のチャイム。それと同時に、顔を血だらけのネズミのマスクで覆った謎の人物が現れる。その人物は一同に向かって告げる。“今から、アスカの復讐を始めます”。手にしたバットを振り回し、アスカたちを追い回すネズミマスクの人物。逃げ惑う6人。そして、1人また1人と仲間たちが減ってゆく。深夜の学校で追いつめられたミサトたちは無事、逃げ切ることができるのか……?そして、犯人の正体は……?
						(dTV)
						
						 血塗れの男が逃げ惑う。それを追うネズミの被り物の人物、振りかぶられる金属バット……。
						 ネズミの被り物をしたまま学校の屋上から飛び降りた少女から、その死から四十九日後に呼び出しのメールが届く。深夜の学校に集められた4人。
						「それでは復讐をはじめます」
						
						 本作は学校を舞台にした復讐譚である。
						 ターゲットにされた6人を繋ぐものとは。アスカの死の理由とは。
						 一応……あらすじからデスゲームものに分類されると思うのだが、この作品はその手のものには珍しく、後ろ盾のない人間によるものである。広い校舎をクローズドサークルにせしめる様はある意味すごい。
						 そしてこの作品、前半はネズミの被り物をした人物が殺戮を繰り広げるデスゲームものを彷彿とさせるシュールなホラーだが、後半は一変、アクション映画になる。普通の女子高生男子高生がジャッキー・チェンばりのアクションをかますのは見ものである。
						
						 一時間ちょっとと短さ故のキレの良さもあり良いのだが、罰ゲームの内容が寒すぎることや、ネタバレになるので伏せるがあることが決定的にダメという点、あとオチがよくわからないと、欠点もやや多い。
						 本作はホラーとして見るよりは、アクションシーンを何も考えず感じるのが吉な作品だ。その視点だと悪くない映画である。
						
					
+クリックでネタバレ感想
						
						 実は序盤に殺されたと思っていたシーンが、叙述トリック(映像トリック)によるものだった点はとても優秀。ただし、あのヤンキーがなぜ被り物を被ったのか、というのが理由付けされておらず、トリックのための話になってしまってるのは難か。
						 あと復讐者が姉だという点は伏線が無くてダメ。これが致命的だった。
						 オチも正直、よくわからない。主人公による操りだとしても、それは上手く行きすぎている。
						
					
					
				
				
				
				
				
					クロユリ団地
					(2013年公開 中田秀夫監督) ★★★☆☆
《2017-06-30》   
						
						
						
						「出る」と噂される団地に引っ越して来た明日香は、隣に住む老人が孤独死している現場を発見。そんな中、彼女はミノルという孤独な少年と出会う。
						(Amazon)
						
						 なぜか人々の恐怖心を煽る「団地」をテーマにした一本。前田敦子と成宮寛貴が主演だが、ある意味二度と見れないであろう組み合わせである。
						 朝の五時半に隣から聴こえてくる目覚し時計の音。奇妙な少年・ミノル。奇妙なイメージ。そして徐々に狂っていく日常。
						 前置きも少なく、物語はテンポよく恐怖シーンに進んでいく。躓いた平穏は、次々と坂道を転がっていき、闇は立ち込めるように前田敦子を包囲していく。あまりの勢いで日常が削られていくので、視聴者は驚くだろう。中盤でこの追い詰め方をするのはちょっとすごい。しかしその弊害からか、謎が畳み掛けられる序?中盤こそ面白いが、後半でかなり失速してしまう感が否めない。
						
						 ……実は本作、普通の「こういうタイプのホラー映画」とは少し違う趣向になっている。この作品にもジャパニーズホラーにつきもの(憑き物?)のシンボルである「怪異」といえる存在が出てくるが、この「怪異」は人間の心の疵を増幅させる機械になっている。なのでこの映画では人間vs怪異ではなく、怪異を通して自身の心と戦うことになる。なので、例えば貞子だとか、そういう怪異の出てくるホラーを期待して見ると、肩透かしを食らうことになるだろう。主軸はそこに置かれてないような気がする(別に怪異自体も怖くないし)。
						
						 元AKB48の前田敦子が主演で、一見「まーたアイドルのプロモーション映画か」と辟易しながら見ていたが、なんと前田敦子が可愛く撮られていない(褒め言葉)。泣き喚き叫ぶさまを美化せず自然に映しているため、アイドルホラー映画故の微妙さはほとんど感じられなかったのは好印象。
						
						 「リング」「仄暗い水の底から」といった雰囲気のホラーを期待して見たらまず間違いなく首を傾げてしまうが、一風変わったホラーを見てみたいという方には勧められるかもしれない。