baseline和ホラー映画日和 く

 喰女-クイメ-(2014) ★★★☆☆
 クリーピー 偽りの隣人 (2016) ★★★★
 黒い家(1999) ★★★★★
 エクスクロス 魔境伝説 (2007) ★★★☆☆
 グロヅカ (2005) ★★★☆☆
 クロネズミ (2010) ★★★☆☆
 クロユリ団地 (2013) ★★★☆☆


喰女-クイメ-

(2014年公開 三池崇史監督) ★★★☆☆
《2017-07-24》   

[狂気][和風]

ゼッタイニ、ユルサナイ。

これは舞台の幕開けか、惨劇の幕開けか― 舞台「真四谷怪談」で、お岩役を演じるスター女優・後藤美雪(柴咲コウ)。美雪の強い推挙により、恋人である俳優・長谷川浩介(市川海老蔵)が伊右衛門役に大抜擢される。さらに、鈴木順(伊藤英明)と、朝比奈莉緒(中西美帆)がキャストとして決定する。伊右衛門のエゴや非道さに傷つくお岩の怨みと恐ろしさを舞台上にうつし出す【四谷怪談の世界】と、それを演じる男女の愛と欲が渦巻く【現実世界】。舞台に集った俳優陣が、稽古と日常のはざまで、それぞれの想いが募っていく。二つの世界で裏切りを知った「叶わぬ想い」は現実と舞台をオーバーラップし、やがて一つの怨念となり、膨れ上がる。彼らを待ち受けるのは愛の成就か、それとも残酷な闇か。
(allcinema ONLINE)

 市川海老蔵と柴咲コウというすごい組み合わせ。
 本作は登場人物の人間関係と、その人々が演じる劇中劇「四谷怪談」の舞台稽古を交互に映し、物語をオーバーラップさせて進めるという構成を採っている。序盤30分ほどは各々の人間関係の描写、「四谷怪談」の方は話の入りの部分なので、雰囲気の良さはかなりあるがやや退屈でもある。面白くなってくるのはこのあとあたりから。
 半分過ぎた頃からなかなかショッキングなシーンや、(特に柴咲コウの)狂ったような場面があり、ホラー濃度が高い。虚構と現実が徐々に入り混じっていき、恐怖に侵食されるシナリオは完成度は高いものの、釈然としない部分があるのはマイナス。




クリーピー 偽りの隣人

(2016年公開 黒沢清監督) ★★★★
《2018-06-26》   

[鬱][狂気][暴力]

あの人、お父さんじゃありません。
全然知らない人です。

犯罪心理学者の高倉は未解決の一家失踪事件を調査していた。ある日、高倉は最近妻と引っ越した家の隣に住む、奇妙な家族と事件の繋がりに気付いてしまい…。
(Amazon)

 キャストとタイトルだけ見たとき、黒沢清だとは思わなかった。少しキャッチーなタイトルだし、使われている俳優も西島秀俊や香川照之と、「旬!」という感じの面々だ。だが安心して見てほしい。本作は(原作こそ別の人なのだが)どうしようもなく黒沢清だ。しょっぱなからモブのサイコパスが警察署内で人質をとるシーンで始まり、これは氏の作品なのだなと実感させられる。
 新居に引っ越した夫婦が隣家に挨拶しに行くと、そこには香川照之とその娘がいて……とまあ、この隣人がやべぇやつかもしれないという話。大筋としては西島秀俊演じるプロファイリングを行う元刑事が隣人に違和感を持ち始め、過去に起きた一家失踪事件との類似点を見つけていく。まああまりネタバレにはならないだろうが、隣に住む香川照之がやべぇやつなのである。
 本作は登場人物への悪意が酷く高く、「精神的えぐい映画が見たい」という気分のときにはもってこいの傑作である。
 ……傑作なのではあるが、個人的に少し評価を下げたのが、ラスト周辺の香川照之の扱いがやや雑かなという感じがする部分。物語に終始漂う暗黒さや、最後の最後のあるシーンなどは好きだったために、そこがちょっと気になる。




黒い家

(1999年公開 森田芳光監督) ★★★★★
《2015-08-24》   

[じわじわ][狂気]

この人間には心がない――

保険会社に勤める若槻慎二は保険金の説明に訪れた女性の家でその女性の息子の首吊り死体に遭遇する。警察は自殺と判断し、それに基づいて保険金も支払われることになった。しかし、両親の態度に不審なものを感じた若槻は自殺に疑問を感じひとり調査を開始する。そして、夫婦の保険金をめぐる異常な行動が次第に明らかになっていく……。
(allcinema ONLINE)

 貴志祐介のホラーサスペンス小説を実写化。原作読んだの十数年前なのでほとんど覚えていない。無茶苦茶怖かった記憶がある。
 大竹しのぶ・西村雅彦というただでさえめっちゃキャラの濃い二人が、無茶苦茶気持ち悪い演技をしている。前半はややコメディ調の演出や音楽を扱ってるものの、二人の演技がとにかく気味が悪い。
 笑いを孕みながらも、「不穏」を体現したような映画。時折挿し込まれる工場などの写真、全体的に薄暗く撮られた映像、金属音……物語に不穏な影が常につきまとっている。
 前半はそうでもないのだが、後半からの畳み掛けが怖い。とにかく二人が気持ち悪い。更に追い打ちをかけるように、タイトルにもなっている「家」を探索するシーンなどは、恐怖で手に変な汗をかいてしまう。それはもう、下手な幽霊が出てくる映画なんかより恐ろしい。
 全体的に演技や演出がやや過剰気味だったり、原作にはなかったはずの余計なコメディ要素が入ってる点など難はあるものの、人間の狂気を扱ったホラー映画として優秀な出来。




エクスクロス 魔境伝説

(2007年公開 深作健太監督) ★★★☆☆
《2017-08-05》   

[アクション][和風]

足を切り落とされるぞ!

人里離れた温泉地“阿鹿里村”へやってきた誰にでも優しいしよりと、自由奔放で常に複数の恋愛を進行させている友人の愛子。だがその村の人々は狂気に染まっており、2人に襲いかかってきた。なぜ村人たちは2人を襲ったのか、この村に隠された秘密とは、そして誰が2人を陥れたのか!?
(Amazon)

 原作は上甲宣之の小説『そのケータイはXXで』。主演は松下奈緒と鈴木亜美。
 「怪しげな言い伝えのある村の温泉に行く」という出だしから既にあやしく、当然のように彼女らは生贄にするために襲われる。そこからの逃亡劇……なのだが、この映画はそれだけではない。襲われてからストーリーが2つに分岐し、方や村人たちに襲われる松下奈緒、そしてもう片方の鈴木亜美は、また別の出来事に遭遇してしまっている。方向性のかなり違うストーリーが時に交差しながら、ひとつの終点に向かっていく構造になっている。これは視聴者を飽きさせないようにうまく工夫されている結果だと思う。
 特に鈴木亜美のルートはバトルモノの青年漫画のような話になっており、ホラーかはともかくこれはこれで面白い。小沢真珠のゴスロリでのアクションシーンもあるよ。
 ストーリー自体も、少しベタだが見終わったあとは悪い気分にはならないので、そういうホラーが苦手なひとにも勧めやすいだろう。
 だがホラー映画としては別に怖いシーンなどはないので、そういうのを期待してはいけない。




グロヅカ

(2005年公開 西山洋市監督) ★★★☆☆
《2017-07-08》   


女子大生のアイ(森下)とマキ(三津谷)は7年前に起こった事件を題材にドキュメント映画を撮るため、友人たちに嘘をついて山奥の山荘へと誘い出す。そこで次々と起こる殺人事件にマキとアイは犯人の真のメッセージを読み取る。
(Amazon)

 「おんなだらけのこわいはなし」というシリーズというか企画の第一弾として制作された映画で、潔いまでに登場人物が全員女性。
 タイトルの「グロヅカ」は安達ケ原の鬼婆伝説、そして能の演目である「黒塚」から取られている。が、別にそこまでグロくはないので、濁点つける必要あったかなという。
 女子大の映研部を復活させてその一作目を撮るために、女の子たちが山奥の寮にやってきた……という話だが、この映研部の目的は「過去の事件の究明」であり、映画の撮影というのは嘘である。なのでほとんど映画の撮影をするようなシーンはなく、主に死体を見つけたり、疑心暗鬼になったり、能面の女に襲われたりするのが中心になる。

 七年前、映研部は人が行方不明になったり、発狂し潰れたという。そこに残っていた8mmフィルムに記録された、奇妙な映像の謎を追う。この映像はなかなか不気味で、画質の悪さも相まって良く出来ている。
 ただ本作は、どちらかというとミステリー的な側面が強い。ホラー部分はちょっとビクッとなる部分はあるが、怖さというより驚かせに近い。クローズドサークルで人がひとりずつ殺されていくので、やはりミステリーっぽい。
 おそらくそこまでコストのかかってない撮影だと思うが、そのわりには十分楽しめた。出演者もグラビアアイドルなどだが、特別極端に演技が悪いということもない。ただ、ラストあたりがもうちょっと作りこまれていたら……というのが残念で仕方ない。そのせいでホラーとしてもミステリーとしても、中途半端になってしまっている。
 ホラーというよりは、女の子同士のいざこざなどが見たい人にはおすすめできるかもしれない。

 まったくの余談だが、福井裕佳梨が普通に出ててびっくりした。嘔吐シーンが見られるのはグロヅカだけ!!(多分)




クロネズミ

(2010年公開 深作健太監督) ★★★☆☆
《2015-08-03》   


ミサト(米村美咲)のもとに、自殺したはずのアスカ(清水美花)から謎のメールが送られてくる。気味悪さを覚えながらも、その指示に従って教室へ向かうと、同じようにメールを受け取った同級生6人が集まっていた。やがて、校内に鳴り響く深夜0時のチャイム。それと同時に、顔を血だらけのネズミのマスクで覆った謎の人物が現れる。その人物は一同に向かって告げる。“今から、アスカの復讐を始めます”。手にしたバットを振り回し、アスカたちを追い回すネズミマスクの人物。逃げ惑う6人。そして、1人また1人と仲間たちが減ってゆく。深夜の学校で追いつめられたミサトたちは無事、逃げ切ることができるのか……?そして、犯人の正体は……?
(dTV)

 血塗れの男が逃げ惑う。それを追うネズミの被り物の人物、振りかぶられる金属バット……。
 ネズミの被り物をしたまま学校の屋上から飛び降りた少女から、その死から四十九日後に呼び出しのメールが届く。深夜の学校に集められた4人。
「それでは復讐をはじめます」

 本作は学校を舞台にした復讐譚である。
 ターゲットにされた6人を繋ぐものとは。アスカの死の理由とは。
 一応……あらすじからデスゲームものに分類されると思うのだが、この作品はその手のものには珍しく、後ろ盾のない人間によるものである。広い校舎をクローズドサークルにせしめる様はある意味すごい。
 そしてこの作品、前半はネズミの被り物をした人物が殺戮を繰り広げるデスゲームものを彷彿とさせるシュールなホラーだが、後半は一変、アクション映画になる。普通の女子高生男子高生がジャッキー・チェンばりのアクションをかますのは見ものである。

 一時間ちょっとと短さ故のキレの良さもあり良いのだが、罰ゲームの内容が寒すぎることや、ネタバレになるので伏せるがあることが決定的にダメという点、あとオチがよくわからないと、欠点もやや多い。
 本作はホラーとして見るよりは、アクションシーンを何も考えず感じるのが吉な作品だ。その視点だと悪くない映画である。

+クリックでネタバレ感想



クロユリ団地

(2013年公開 中田秀夫監督) ★★★☆☆
《2017-06-30》   


「出る」と噂される団地に引っ越して来た明日香は、隣に住む老人が孤独死している現場を発見。そんな中、彼女はミノルという孤独な少年と出会う。
(Amazon)

 なぜか人々の恐怖心を煽る「団地」をテーマにした一本。前田敦子と成宮寛貴が主演だが、ある意味二度と見れないであろう組み合わせである。
 朝の五時半に隣から聴こえてくる目覚し時計の音。奇妙な少年・ミノル。奇妙なイメージ。そして徐々に狂っていく日常。
 前置きも少なく、物語はテンポよく恐怖シーンに進んでいく。躓いた平穏は、次々と坂道を転がっていき、闇は立ち込めるように前田敦子を包囲していく。あまりの勢いで日常が削られていくので、視聴者は驚くだろう。中盤でこの追い詰め方をするのはちょっとすごい。しかしその弊害からか、謎が畳み掛けられる序?中盤こそ面白いが、後半でかなり失速してしまう感が否めない。

 ……実は本作、普通の「こういうタイプのホラー映画」とは少し違う趣向になっている。この作品にもジャパニーズホラーにつきもの(憑き物?)のシンボルである「怪異」といえる存在が出てくるが、この「怪異」は人間の心の疵を増幅させる機械になっている。なのでこの映画では人間vs怪異ではなく、怪異を通して自身の心と戦うことになる。なので、例えば貞子だとか、そういう怪異の出てくるホラーを期待して見ると、肩透かしを食らうことになるだろう。主軸はそこに置かれてないような気がする(別に怪異自体も怖くないし)。

 元AKB48の前田敦子が主演で、一見「まーたアイドルのプロモーション映画か」と辟易しながら見ていたが、なんと前田敦子が可愛く撮られていない(褒め言葉)。泣き喚き叫ぶさまを美化せず自然に映しているため、アイドルホラー映画故の微妙さはほとんど感じられなかったのは好印象。

 「リング」「仄暗い水の底から」といった雰囲気のホラーを期待して見たらまず間違いなく首を傾げてしまうが、一風変わったホラーを見てみたいという方には勧められるかもしれない。






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