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心霊写真部

 心霊写真部 壱限目&弐限目 (2010) ★★★☆☆
 心霊写真部 劇場版 (2015) ★★★★
 心霊写真部 リブート (2016)


心霊写真部 壱限目&弐限目

(2010年公開 永江二朗監督) ★★★☆☆
《2017-07-09》   


ごくごく普通の生活を送っていた高校生≪二宮佳夕≫は、ふとしたきっかけで写真部に入部することになる。しかしこの写真部は普通とは違っていた。それは“心霊写真部”。写真部のサイトに送られてくる心霊写真。佳夕は、同じ心霊写真部のリリ・牧村とともに調査を進める中で、心霊写真1枚1枚に隠された、恐ろしい事実の数々を目にしていく…。そして心霊写真の謎を追ううちに様々な事件に巻き込まれていく。
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 今回のレビューは少し特殊で、本作は一話30分ほどの連続ドラマであり、DVDとしては全二巻、一話完結×三話ずつ収録されている。DVD二枚をそれぞれレビューしても文章が重複するため、今回は二枚で一つのレビューにまとめた。
 
 原作は福谷修のホラー小説で、本人が脚本もやっている。心霊写真ばかりを扱った部活動・心霊写真部が巻き込まれる(あるいは首を突っ込む)心霊現象や事件を描いている。デジタルカメラが普及した今、心霊写真を扱った作品は最近では珍しい感じ。

 本作はホラー映画だが、「あくまでフェアに」という姿勢が感じられる。30分一話完結のドラマだが伏線は丁寧に置かれており、探偵的なポジションのキャラクターもおり、ミステリでの『解決編』に相当するシーンの直前には、いままでに配した伏線を確認させてくれている。本作の怪異は単に不条理なものではなく、そこには死者なりの背景とロジックが存在している。ホラーにも解を求めたい人などにオススメ。
 ……しかし、その丁寧さが、ホラーとしての怖さを多少損ねてしまっている部分は否めない。一応、ある程度の水準のレベルはあるが。
 
 本シリーズはどうやら福谷修が、ゲーム『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』の次に続く作品をと、そういう構想の元で作られたシナリオという経緯があるらしく、たしかに本作の雰囲気はトワイライトシンドローム的な空気がある。「怪異にある程度の解を」というのも、ゲーム的ではある。
 
 本来ならばこのレベルであれば★4にしていたが、今回は★3にしている。というのも本作の問題点が、ホラーとは関係のない別のところにある。
 この「心霊写真部」は基本一話完結な話ではあるが、部分的に連続している要素がある。その例をひとつ挙げると、作中では連続猟奇殺人事件が起きており、その犯人である『マスク殺人鬼』という存在が出てくる。この殺人鬼は徐々に心霊写真部の面々が遭遇する事件に関わってきていた。しかし本作の最終話(DVD2巻・六話)ではまったく回収されていない。それどころか、別の人物の謎が増えたところで話が終わる。
 ……実は本作、元々は全四巻構成(おそらく12話)の予定だったが、売上の不振から打ち切りにあってしまったようなのだ。なのでかなり面白くなってきたところで、物語が終了する。傑作が産まれる可能性はあっただけに、本当にもったいない。
 
 とまあそんな評価のしづらい感じだったが、「心霊写真部 劇場版」というものがある。これは本作のリブート作品だそうだが、実質「ドラマ版心霊写真部」の続編的立ち位置だそうだ。
 
 あと余談だが、主演の女の子をどっかで見たと思えば『都市霊伝説 幽子』の人か。




心霊写真部 劇場版

(2015年公開 永江二朗監督) ★★★★
《2017-07-10》   


高校生の二宮佳夕は、ふとしたきっかけで写真部に入部する。しかしこの写真部は普通とは違っていた。心霊写真を専門に研究・調査する”心霊写真部”だったのだ。佳夕は持ち前の好奇心で、牧村部長や先輩のリリと共に調査を進め、心霊写真に秘められた、恐るべき真実を紐解いていく。謎が謎を呼ぶ中、やがて彼らの気付かぬ間に、巷を騒がせるマスク殺人鬼の影が忍び寄っていた…。
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 本作はリブート作品とあってキャストはほとんど変わってはいるが、ドラマ版『心霊写真部』の正当な続編にあたる。はじめの二分くらいが前回の内容がダイジェストで流れるが、これはわざわざ新しいキャストで撮られている(部長だけは続投)。
 ドラマ版が途中で打ち切られた約2年後、ニコニコ動画で人気に火が付き、制作費をクラウドファンディングで集めたのちに、目標の5倍の金額を達成して作られたという経緯がある。支援者は作中の心霊写真に顔が映されたり、スタッフロールに載ったりしている。

 序盤はテーブルターニング『エンジェルさん』に纏わる事件だが、それも含めてドラマ版で中途半端に終わった『マスク殺人鬼』の話が主軸になる。なので当然だが、ダイジェストがあるとはいえドラマ版を観なければ十分には理解できない。
 劇場版だけあり、演出の力の入れ方増している。シナリオも凝っていて、しかも進捗やノウハウを引き継いでるので前置きがなく、初速がとても早い。これは場合によっては良し悪しではあるが、ドラマ版を見ているのならばむしろいいことだろう。
 「謎の解明」や「話の折りたたみ」が本作なので、ストーリー性の為にホラー要素がやや犠牲になってはいるが、ジャンル・ホラーだからできたシナリオ/ホラーという枠組みでなければ着地できなかった場所に、しっかりと辿り着いている。これは紛うことなく、「心霊写真部」の物語だった。
 
 完全に余談ではあるが、相変わらず部長が痙攣していたり、貴重なシャワーシーンがある。




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