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貞子シリーズ

 リング(1998) ★★★★★
 らせん(1998) ★★★★★
 リング2(1999) ★★☆☆☆
 リング0 バースデイ(2000) ★★★☆☆
 貞子3D(2Dバージョン)(2012) ☆☆☆☆☆
 貞子3D2~2Dバージョン~(2013) ☆☆☆☆


リング

(1998年公開 中田秀夫監督) ★★★★★
《2015-08-28》   

[呪い][幽霊][じわじわ][音楽がいい]

ビデオに殺されるなんて…

「見ると一週間後に死ぬ」──子供たちの間で噂の広まる呪いのビデオの取材をしていたTVディレクター・玲子の親戚の娘・智子が、そのビデオを見て死んだ。しかも、一緒にビデオを見た3人のクラスメイトも、同日の同時刻に死んでいたのだ。真相を探るべく、智子たちがビデオを見た伊豆の貸別荘へ赴いた玲子は、そこでビデオを発見。自らもそのビデオを見て、死の予告を受けてしまう。呪いを解く方法はないのか。玲子は、大学で講師をしている離婚した夫・竜司に助けを求める…。
(dTV)

 有名作中の有名作。「見ると一週間後に死ぬ」というビデオと貞子を巡る物語、鈴木光司の小説のリングシリーズ第一作目。
 ある種、日本ホラー映画のパラダイムシフト的な作品。やはり20年近く前の作品、やや古臭さはある。というか「ビデオ」って媒体の気味悪さ、いまの若い子どもたちにはわからないような……。独特の画質の粗さといい、ホラーには結構適した題材だったんだなぁ。
 この話のキーアイテムとなる「呪いのビデオ」の映像はやはりかなり不気味。よくもまあ、こんな映像作ったなという感じ。
 物語はかなりテンポがいい。最低限必要なもの以外、ほとんど描かれておらず、スマートな作りになってる。そして意外にも、ホラー描写は終盤までほとんどない。魅力的な謎と怪奇性でラストあたりまで引っ張る。

 主人公の浅川が原作では男なんだよね。ついでに貞子も実際はテレビから出てきたりはしなかったはず。あとは色々貞子には難しい設定がある。そんな映画の都合的な改変がありながらも、破綻なく、そしてバランスよくまとめ上げてる(やや強引な手段を使ってはいるものの)。
 「実はさほど怖くない」ということや、やはりやや古臭い点が少々瑕ではあるものの、手堅くまとまった良作である。

 若き日の竹内結子や中谷美紀が出てるのも、意外と見どころ。あとすごく余談だが、主題歌の「feels like "HEAVEN"」はフルで聴くと曲調は明るい良曲である(歌詞は暗いが)。



らせん

(1998年公開 飯田譲治監督) ★★★★★
《2015-08-29》   

[呪い][狂気][ミステリー]

あいつは死んだはずなのに。
その謎は「リング」に始まり、その恐怖は「らせん」につながる。

幼い息子を死なせて以来、自殺ばかりを考えている解剖医・安藤。ある日、彼は謎の死を遂げた高山竜司の解剖を担当することになった。安藤と竜司は学生時代の同級生だった、竜司の体を解剖した安藤は彼の胃の中から暗号の書かれた紙片を見つける。それは安藤たちが学生時代に流行った遊びで、彼は「DNA PRESENT」という言葉を読み取るのだった。そんな折、玲子が車の事故で息子の陽一と共に死んだという情報が安藤に入ってくる…。
(dTV)

 「リング」と同時上映された、貞子を巡る鈴木光司原作のホラーシリーズの二作目。
 時系列としては「リング」の後の話になる。前作のネタバレになってしまうのだが、ある登場人物の死がきっかけで主人公は騒動に巻き込まれることになる。
 本作は前作とは違い、科学的アプローチがなされている。「リング」では原作からかなり要素を削っていたのだが、本作「らせん」は比較して原作にかなり近く作られている。原作のファンである私には嬉しい限り。
 かろうじて正常の側にいる佐藤浩市が、狂気に足を踏み入れ蝕まれていく様はなかなか。中谷美紀も不思議な負の魅力を放っている。物語の構図の解明からの破滅的なラストの情景も美しい。

 惜しむらくはホラー映画としては怖くないという点だろう(原作は「らせん」の方が怖かった記憶がある)。解決編にあたるため、致し方ない部分はある。



リング2

(1999年公開 中田秀夫監督) ★★☆☆☆
《2015-08-29》   

[呪い][幽霊][超能力]

リングの恐怖は、始まりにすぎなかった。

戸の中から発見された貞子の死体が解剖された。ところが、30年前に殺された筈の彼女の遺体は、解剖の結果、少なくとも死後1年ないし2年しか経っていないことが判明する。同じ頃、貞子の遺体の発見者である高山竜司の死に疑念を抱いた彼の恋人・舞は、幼い息子・陽一と共に行方不明になっている竜司の前妻で事件の鍵を握る浅川玲子を探す為、玲子の後輩のテレビ局員・岡崎に接触していた…。
(dTV)

 「リング」の続編。この作品は映画完全オリジナルで、「リング」からのイフ展開、「らせん」が無かったらということになっている。キャストは「リング」と続投。中谷美紀演じる高野舞が、かなり違う役割として配されている。
 続編として「らせん」は原作通り科学的アプローチで前作を否定する形をとっているのに対し、本作では元々のホラー面を強く前に出している。

 中谷美紀と、恋人の前妻との遺児って設定はいい。「リング」との繋げ方自体はいいのだが、どうも物語が変な方向に進んでいく。「リング」のじわじわとしたホラーから、妙な超能力モノになってしまうのだ(元より超能力は描写されていたが、ここまで前面に押し出されてなかったのに)。後半のシナリオを支配している理論も正直意味がよくわからないし、行動の動機もいまいち理解できない。

 ホラーとしても怖いシーンはほとんどない。中谷美紀のおねショタモノとしてなら、わりと楽しめる。



リング0 バースデイ

(2000年公開 鶴田法男監督) ★★★☆☆
《2015-08-29》   

[呪い][美少女][超能力]

ついに明かされる貞子出生の秘密

昭和43年。超能力者だったがために、化け物扱いされて育った山村貞子。18歳になった彼女は、母・志津子の死をきっかけに上京し、劇団・飛翔の研究生になっていた。ところが、彼女の入団以降。劇団内には不穏な空気が漂いはじめ、ある日、看板女優の愛子が稽古中に謎の死を遂げてしまう。愛子の代役として主役に抜擢されたのは貞子だった。団員たちは彼女を奇異な目で見るようになるが、唯ひとり貞子に優しくしてくれたのが、音響効果を担当する遠山。貞子は、遠山にほのかな恋心を抱くようになるが…。
(dTV)

 リングシリーズの四作目。鈴木光司の短編「レモンハート」を原作とした、怨霊「貞子」誕生の物語。山村貞子役として仲間由紀恵が抜擢されている。
 本作はホラー映画というよりは、ラブストーリーと愛憎劇の側面が結構強い。物語は全体にホラー的な雰囲気をまとっているので、いわゆるホラーの文脈での恋愛映画というべきか。
 ホラー映画で劇団といえば、次々と起こる怪死。この作品もご多分に漏れず、ちょくちょく人が死ぬ。……死ぬのだが、ホラー映画を期待して見ると少々テンポの悪さが気になる。そもそもホラーを主軸にしていないから、仕方ないことではあるのだが。
 後半からは少々スリラー的な雰囲気を楽しむことができる。色々な人間の思惑が交差し、結果破滅的な展開が勃発。この辺りからの盛り上がり方は結構いい。特にラストの貞子に関しては、本編よりも怖いような気がする。
 物語の成り立ち上、ある程度終着点が決まってしまっている。そこに至るまでの過程としての「貞子」の物語をよく描いている。

 とはいえ、ホラー映画としてはあまり怖くなく、あくまで「リング」シリーズを見ていること前提での物語で副読的な立ち位置の映画なので、単体としての評価はやや低めに。



貞子3D(2Dバージョン)

(2012年公開 英勉監督) ☆☆☆☆☆
《2015-08-30》   


鮎川茜(石原さとみ)は、自分が勤める女子高で流れている奇妙なうわさを耳にする。それは、自殺する様子を生中継する映像が動画サイトに投稿され、それをたまたま目にしていた者も死んでしまったというものだった。そんな中、茜の教え子の一人が不審な死を遂げ、似たような変死事件が各地で続発するように。警察は一連の事件を自殺だと断定するが、死んだ者たち全員がうわさになっていた自殺動画を見ていたことが判明する。
(シネマトゥデイ)

 一応リングシリーズ五作目……なんだけど……。
 なんか知らないが、ビデオが消滅した結果、「呪いの動画」になってる。ニコニコ動画とか、オカルト板とか、ネット中心で話が進む。それは時代の流れ上、仕方ないし、まあわかる。正直大の大人が「ニコ動!ニコ動が!」と叫ぶのは見てて相当恥ずかしいが、まあ、置いておこう。

 本作は過去作のじめじめとしたJホラー的シリアス路線から一転、単なるびっくり系ホラーになってしまっている。この時点で、元来の「リング」シリーズファンは盛大にがっかりするだろう。
 ホラー描写はほとんどのパターンが、カメラが移動して死角にあったものを写して「バーン!」って大きな音を鳴らすか、画面から腕か髪の毛が出てきて「バーン!」って大きな音を鳴らすだけ。元が3D映画だった、という背景を考えれば、その演出も納得は一応出来るのだが、かなり安っぽい。なまじ映像が綺麗な為、それが更に際立って見えてしまう。髪の毛が触手になるってなんの冗談だよ。

 シナリオ。これに関して「Sの復活だ!」と映画内でめちゃくちゃいわれるのだが、これの意味がまったくわからない。原作「ループ」を読んだ観客ならば、登場人物の「安藤孝則」という名前と、「ループ」の終盤で起きたことを照らし合わせれば、その「復活」の意味がわかるかもしれない。この映画の原作にあたる「エス」を読んでいないのですごく憶測ではあるけれど……とここまで書いたけれど、どうやらまったく関係ないらしい。本当に復活させたかったらしい。しかし復活するロジックも意味がわからなければ、どうすれば復活したことになるのかも曖昧なまま。なんでか知らないが貞子が電子的存在になって、受肉するための器として石原さとみを復活させようとしてるっぽい感じ。貞子がなんで復活したいのか全くわからない。……俺の知ってる貞子像となんか違うぞ。
 というか貞子自身、単にめっちゃ足の長い四つん這いのモンスターになってる。しかも井戸も、あの陰気くさい床下などにはなく、そっからワラワラ貞子もどきが湧いてくる。解決方法も全然釈然としない方法でハッピーエンドで終わる。ご都合展開もいいところだ。
 この脚本、監督と連名のひと、どっかで見たことあると思ったら以前一般公募であった「リング2」のシナリオ候補に残ったけど落選したひとっぽいんだよね……。ならリングシリーズ、多少なりとも知ってるだろうに、なんでこんなことに……「これは全く貞子関係ない」「単なるホラーのアイコンとして都合よく利用してるだけ」って考えなかったのかな。

 唯一、本当にこの映画で唯一の救いは、主演の石原さとみな点。しかも一番かわいいときの石原さとみなのだ。本当に彼女は変にビッチ風の配役とかされる前の彼女なので、見てて気持ちのよい頃の彼女だ。
 あと付け加えるなら、山本裕典の芝居じみたキチった演技と、貞子役の橋本愛が可愛かったくらい。



貞子3D2~2Dバージョン~

(2013年公開 英勉監督) ★☆☆☆☆
《2015-08-30》   

[呪い][美少女][超能力]

あの子が生まれた

娘の凪を生んだ後、鮎川茜は死亡し、安藤孝則(瀬戸康史)は妹の楓子(瀧本美織)に娘を託して身を潜める。世間では謎の死亡事件が頻発し、捜査が進むうちにそれが5年前の「呪いの動画」事件に関係することが明らかに。やがて楓子はそれらの死が凪の周辺で起きていることに気付き、過去の事件を調べ始めるのだが……。
(シネマトゥデイ)

 リングシリーズの映画六作目。まあ、なんというか異常に香ばしかった前作「貞子3D」の続編。
 前作の主人公だった石原さとみは子の出産と共に死亡ということになっており、安藤もやさぐれてる。主人公は安藤の妹……おや、「らせん」の主人公に安藤に娘がいたっけか……? もう本シリーズは全く別もんとして見た方がよいのだろうなぁ。
 前作で完全に方向を見失っていた貞子だが、本作ではやや本来の雰囲気を取り戻している。なによりバイオハザードのリッカーみたいな貞子が出てこない。反省点が活きてる!(やったぜ)
 しかし相変わらず、ホラー描写は特に意味のないものが飛び出てびっくりさせてくるだけってのが多い。おまけにあまり怖くもない。それでもリッカー・貞子がワラワラ出てくるよりはまだJホラーっぽい。モンスター系のホラーなのは否めないものの、全然マシである。

 ……しかし哀しいかな、いかんせん結構重要なネタが完全に序盤で割れてしまっている。主人公はわからないだろうが、前作を見たメタ視点を持つ視聴者なら、即看破できるネタを後半まで引っ張る。
 そして前作でもそうだったのだが、本作も登場人物の行動にいまいち一貫性がない。前作の黒幕的登場人物がレクター博士よろしく主人公に助言を与えたりたりする。何のために前作の事件を起こしたのかコイツ……。
 更にいうと、とってつけたような感動モノのオチも正直やめて欲しかった。あと貞子がまったく関係ない。リッカー貞子はやめろとはいったが、思い切って貞子自体をほとんど使わないって発想は新しすぎる。
 まあ、それでも、前作よりはマシ。



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