baselineカテゴリ/呪怨シリーズ

呪怨シリーズ

呪怨(ビデオ版) (2000)      
 呪怨(劇場版)(2003) ★★★★
呪怨2(ビデオ版) (2000)
 呪怨2(劇場版)(2003) ★★★☆☆
 呪怨 白い老女(2009) ★★★★
 呪怨 黒い少女(2009) ★★★☆☆
 呪怨 終わりの始まり (2014) ★★☆☆☆
 呪怨 -ザ・ファイナル- (2015) ☆☆☆☆


呪怨(劇場版)

(2003年公開 清水崇監督) ★★★★
《2015-08-31》   


老人介護ボランティアで徳永家を訪れた女子大生の理佳は、そこで俊雄と名乗る少年と黒い影の女の幽霊に遭遇する。数日後、理佳からの連絡がないのを心配した福祉センターの上司が、死んでいる老婆とその側で呆然としていた理佳を発見。更に、連絡を受けた警察によって、天井裏から老婆の息子・勝也夫婦の変死体が見つかった。実は9年前、その家では当時暮していた佐伯剛雄が妻の伽椰子を殺害、自らも路上で死んでいるのが確認され、6歳だった息子・俊雄が行方不明になっているという事件が起こっており、以来、その家の住人や関係者の死や失踪が続出していた。果たして、全ては強い怨念を抱いたまま死んだモノの呪いによる“業”の仕業なのか。やがて、怪現象は勝也の妹・仁美、9年前の事件を担当した元刑事の遠山、理佳の友人で小学校教師の真理子、そして理佳自身、時を隔てて遠山の娘・いずみへと波及し、全員を死に至らしめるのだった。
(dTV)

 これまた「リング」と並ぶ日本を代表するホラーの一角。本作はその呪怨シリーズの劇場版の一作目。
 物語は群像劇のような形で進められる。この構成は無駄な描写を極力抑え、登場人物の死や失踪・発狂を間髪入れずに次々と叩き込めるという点で実に面白い。人々を容赦なく使い捨てにできるのは、ホラー映画にとっては強みだろう。少々、キャラクターの関係性や時系列を追うのがつらいという難点はあるが。
 ドアを引っ掻く音、柱時計の音、何かが軋む音……すごく地味な演出であるが、視聴者にかなりの気味悪さを抱かせる音の使い方が上手い。また元凶となる家の構造は普通なのだが、目張りされた押入れや使い古されて黄ばんだ布団で、巧妙に異界感を醸し出している。
 本作での「佐伯俊雄」と「佐伯伽椰子」はわかりやすい恐怖の象徴とされているが、これらのキャラクターは映画のアイコンに過ぎず、恐怖の一端でしかない。この作品は音・演出・脚本がすべて「観客を怖がらせる指向性」にとことん特化している。

 この作品で面白いなと思った点は、心理的安全地帯を尽く潰しているってことだと思う。布団の中やベッドの壁際など、大方安心できる部分を消しに来ている。また、日中や明るい屋内でも、お構いなしにホラー描写が飛び出してくる。暗いシーンばっかりで怖がらせようという一般的ホラーからまったく反していて面白い。ある意味、「明かりのもと」という聖域を潰している、と言える。これはなかなか勇気のいることだ。

 本作の「恐怖」は、映画自体にはさほどない。この映画が活きるのは、映画を見たあとだ。普遍的な環境でホラー描写を描くことで、シャワーを浴びている時、眠る時、映画を見た後の生活で「何かいるかもしれない」「何かあるかもしれない」と思わせる。そういう「恐怖」を観客に与える。まさしく怖がらせる為のホラー映画。ストーリーも単に見せるだけでなく、ひねりがくわえられていていい。
 しいて残念な点を挙げるとするならば、映画自体はあまり怖くなく、前述のためとはいえホラー描写が過剰過ぎてギャグに見えてきてしまうという点だろうか。とまれ完成度は高い。

 地味に幼いころの市川由衣が出てるのがよかった。あと、EDの推定少女。



呪怨2(劇場版)

(2003年公開 清水崇監督) ★★★☆☆
《2015-08-31》   

[幽霊][呪い][美少女]

身の毛もよだつ絶頂

ホラー映画への出演が続く女優・原瀬京子はこの日、関わった者たちの悲惨な死や行方不明が後を絶たない“呪われた家”をレポートするテレビの特番にゲスト出演した。そしてその夜、フィアンセ・将志の車に乗り家路につく京子。だがその道中、彼の車は首都高速で猫を轢いてしまう。将志は猫の死体を処理せずに車を発進させるが、その時、車内には不気味な存在が紛れ込んでいた。その刹那、車は壁に激突して大破。将志は意識不明の重体に陥り、妊娠していた京子も重傷を負って流産してしまうのだった…。
(allcinema ONLINE)

 呪怨シリーズの劇場版二作目。時系列としては「劇場版1」以降の話。
 前作で事件の起こった「呪われた家」をテレビレポートすることになるが、それにまつわる人々が死んだり行方不明になる。
 ホラー映画として前作に比べ、驚かせ方がかなり実直な作りになっている。内容もバラエティ豊かで、オムニバス形式なのが活きている。
 ただ、メインとなるストーリーを作ってしまったため、前作にあったテンポの良さが損なわれてしまっている。前作は次々と登場人物を使い捨てることで、飽きそうになる観客を上手く繋ぎ止めていた。本作では主人公のストーリーを作ってしまい、しかもその内容がさほど惹かれるものでもない(ネタがすぐに分かってしまい、ラストあたりの展開もその答え合わせでしかない)。
 物語を支配する構図の妙など、決して面白くないわけでも、比較して怖くなくなってるわけでもない。というか、玉石混淆ではあるものの本作の方が「ホラー」の演出としては上手く怖いのだが、「呪怨 劇場版」と二作連続で見るとどうしても少々食傷気味になってしまう。出来れば少し時間を空けて見た方が楽しめるだろう。
 ……とはいえ、共通する登場人物もいるため、忘れない程度には近い間に見るべきだとも同時に思うので難しいところ。



呪怨 白い老女

(2009年公開 三宅隆太監督) ★★★★
《2015-08-31》   

[呪い][幽霊][狂気]

呪いつづけて、10周年。

高校生のあかね(南明奈)が小学生のころ、司法試験に失敗した息子が一家5人を惨殺するというむごい事件が起きる。その後犯人は首つり自殺するが、彼は死の直前の自分の声と少女の声が録音されたカセットテープを遺して逝く。被害者の少女はあかねの小学生のころの親友で、ある日昔から霊感の強かった彼女の前に突然その少女が現れ……。
(シネマトゥデイ)

 呪怨シリーズの通算五作目にあたる。「黒い少女」と同時上映だった。正確には「呪怨」シリーズのスピンオフ的な立ち位置。本家と同様にオムニバス形式を取られている。
 端的にいうと、序盤からかなり怖い。「呪怨」のシリーズからは少々外れてるものの、のっけから怖さ・気味悪さが全力で襲い掛かってくる。
 元ネタ以上にテンポの良さが際立ち、次々と不条理なホラー描写が叩き込まれる。元の「呪怨」から離れたという性質上、予想がつきづらいというのもあるだろう。
 ラストあたりのシーンはまさしく狂気の産物。ちょっとダレてきた雰囲気を、一気に引き戻してくれる。
 残念だった点を挙げるとすれば、一時間という短さ故のストーリーにあまり深さがないことだろうか。単純にホラーの為のホラー映画になっている。あと「白い老女」のタイトルも、出てくる幽霊的存在も、あまり意味がないという点。
 ただ、綺麗な流れとその回収の仕方は優秀で、見ていて気持ちのいい(ホラーにこの表現はちょっとおかしいが)切れ味がある。
 「呪怨」であることをあまり意識しなければ、充分楽しめるだろうと思う。



呪怨 黒い少女

(2009年公開 安里麻里監督) ★★★☆☆
《2015-08-31》   

[呪い][幽霊][美少女][病院]

怨みつづけて、10周年。

看護士の裕子(加護亜依)は芙季絵という少女の担当になってから、自分の身辺で奇妙な現象が起きるようなったと感じていた。検査をすると芙季絵の体内から嚢腫が発見されるが、それはこの世に生を受けることのできなかった者たちのうらみが集結したものだった。やがて芙季絵の父親は殺人を犯し発狂したため、母は娘の除霊を頼むが……。
(シネマトゥデイ)

 呪怨シリーズの通算六作目にあたる。「白い老女」と同時上映。「呪怨」シリーズのスピンオフ的な立ち位置。本家と同様にオムニバス形式を取られている。
 本作は「白い老女」とちょくちょく登場人物が共通するものの、関係はほとんどない。
 なんというか、演出自体はかなり本家「呪怨」に近い。というか意図的にパロっているのかとすら思うくらい、本家で見たことある感じのホラー演出がされている。しかし「数撃ちゃ当たる」的に過剰にホラー描写を乱打する本家とは違い、怪異的存在を直接描写することをちょくちょく先に伸ばす・或いはぶつ切りにして終わらせる傾向がある。
 もっとも「白い老女」と続けて見た場合、その作風の違いからまあこういうのでもいいかという感じになりはするが。

 途中から霊能者が出てきた時は笑ってしまった。新しいアプローチではあるが、不条理な虐殺を描いてきたシリーズ作品からはめちゃくちゃ浮いている。
 というわけでこの作品を見るならば、あくまで「呪怨」の演出を借りたホラー映画という、ほとんど別のスタンスで見た方が吉。ラストあたりも結構無茶苦茶で、「呪怨」っぽくない。別のホラー映画みたいだ。
 主人公格の女の子はかなり可愛い。安里麻里は、女の子を描くことは上手いんだけどな……。



呪怨 終わりの始まり

(2014年公開 落合正幸監督) ★★☆☆☆
《2017-07-17》   

[呪い][幽霊][美少女]

肌が粟立つ恐怖の極点。日本発、世界を絶叫させた最恐ホラーシリーズ、再誕!

小学校3年生の学級担任を急きょ務めることになった結衣(佐々木希)は、不登校を続けている生徒・佐伯俊雄の自宅を訪問した。しかしその日をきっかけに、彼女の身に不可解な現象が起こり始める。その家は、足を踏み入れたもの全てが奇妙な死を遂げる「呪われた家」だったのだ。少しずつ明らかになる佐伯家の過去。次から次へと起こる怪事件。しかし結衣は、この家に導かれるように、再び足を踏み入れる―。
(Amazon)

 本作は過去作との繋がりがないというか、リブート的な立ち位置で、ビデオ版と劇場版の各2作、計4作を新たな設定で作り直したという作品……なはず。ザッピング形式は健在。
 個々のシーンは単体で見ればまあまあなホラーっぽさなのだが、これらのシーンは過去作のアイデアの流用っぽく、どれも既視感があるものばかりなのが致命的。見たことある感じのシーンが何度も続くので、先があんまり気にならない。
 再設定された伽倻子と俊雄にしても、その変更は必要あったのかなという気がすごくする。あるいは後の映画で使いたいので設定を変えた可能性もかるのでまだなんとも言えないが……。
 一応、ある構図のネタ自体はわりと面白いが、それをして何か効果があったのかといわれると首を傾げざるを得ない。
 ホラーシーンだけで言えばそこそこ頑張ってはいるが、既視感がすごい上に過去シリーズとの比較で新規性がまったく感じられないので改めて見る必要は……。



呪怨 -ザ・ファイナル-

(2015年公開 落合正幸監督) ★☆☆☆☆
《2017-07-17》   

[呪い][幽霊][美少女]

最恐が、終わる

小学校教師の妹・結衣が失踪したと知った姉の麻衣は、結衣が頻繁に佐伯俊雄という不登校の生徒の家を訪れていたことを知る。手掛かりを得ようと、麻衣は彼の居場所を捜し始め…。
(Amazon)

 『終わりの始まり』の直接の続編にあたる。主人公は前作の姉。
 前作を見ていない人のためなのだろうか、前回やったのと同じものを改めて怖がるシーンがいくつか出て来る。渦巻きにしても鼻歌にしても擦り切れるほど何度も使ってくるので見ていてしんどい。特に鼻歌はいくらなんでもくどすぎる。前作を見た視聴者なら既知の情報をさも「驚愕の真実」みたいな雰囲気でやられてもなぁという。
 ホラーシーンに関しても、ほとんど全部が「後ろにいる気配→振り返ってもいない→不意打ちで俊雄or伽耶子」のパターンが多い。ラストでややマシになるのだけど、そこまでがしんどい。
 この作品では呪いの対象が拡大しているのだけど、そこまでルールがガバガバになってしまうと何でもありだし、オチに関しても「まあそうなるよね」と目新しさが皆無なのが……。あとファイナルだが全然終わってはいない。
 ただ、映像というか撮り方は非常に綺麗で、2000年前後の良いホラー映画の雰囲気が出ている。



ページのトップへ戻る